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福娘童話集 > 江戸小話 > その他の江戸小話 >ざると、たまごと、だるま
第 15話
ざると、たまごと、だるま
あるときのこと、ざると、たまごと、だるまが、顔をあわせました。
「よう、久しぶり。どうだ、ひと風呂あびて、さっぱりしてこようか」
「それがいい、それがいい」
そこで三人はそろって、お風呂屋へでかけました。
お風呂屋はもう戸を開けていましたが、番台にはだれもいません。
三人はのんびりと、ゆっくりお風呂に入りました。
「ああ、いいお風呂だった」
三人が出ようとすると、いつのまにか番台に、お風呂屋のおかみさんがすわっています。
お金を、払わなくてはなりません。
ところが三人とも、一文なしです。
そこで、
「おあし(→お金)を払わないで、ここから出してもらうには、どうしたらよかろう?」
と、相談をしました。
「そうだな。ごにょごにょ、ごにょごにょ。・・・よし、それでいこう」
相談がきまると、まず始めにざるが、
「おら、ざっと入っただけだから、今日のところは、ただにしてくれや」
と、番台のおかみさんに言って、さっさと出ていきました。
たまごはたまごで、
「おら、たまたま入っただけだから、今日のところは、ただにしてくれや」
と、さっさと出ていきました。
お風呂屋のおかみさんが、あとにのこっただるまから三人分のお金をもらおうとすると、
♪だるまに、おあしが、あるものか、ホイ
♪だるまに、おあしが、あるものか、ホイ
と、だるまは、おどりだしました。
それがおかしくておかみさんが大笑いすると、だるまはおどりながら、そのまま出ていきました。
おしまい
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