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第 16話
衣の値打ち
ある坊さんが、金持ちの家にごちそうをよばれに行きました。
だけど、偉そうにするのはきらいなので、いつも着ている粗末な木綿の衣で出かけて行ったのです。
金持ちは、そんなみすぼらしい姿の坊さんを見て、
「なんだ、みっともない」
と、ばかにしたように扱いました。
すると坊さんはこっそりぬけ出して、寺へ帰って金ピカの立派な衣に着替えて、金持ちの家へもどったのです。
すると今度は、さっきとえらいちがいで、とても丁寧なもてなしです。
「ささ、ご住職、ようこそ。上座(かみざ→目上のものがすわる席)へどうぞ。お口に合いますか? えんりょなく、めしあがってくださいませ」
そこで坊さんは着ていた金ピカの衣をぬぐと、上座にすえて、
「さあ、おえらい衣さん、召しあがってくださいな」
と、言って、すたすた帰って行ったのです。
おしまい
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