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第9話

うかれヴァイオリン

うかれヴァイオリン
イギリスの昔話 → イギリスの国情報

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 「宵菜」  和茶和茶屋

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投稿者 「Dr シロネコ

 むかしむかし、ある若者が、お百姓(ひゃくしょう)さんの家で働きました。
 若者は三年もの間、朝から晩まで働き続けましたが、お百姓さんはお給料をくれません。
 そこで若者が文句を言うと、
「ふん、なまいき言いやがって。なら一年で銅貨一枚、三年で三枚だ」
と、銅貨を三枚だけくれました。
 とても少ないお給料ですが、若者はそれでがまんをすると旅へ出ました。

 森を進むと、途中で小人が現れました。
 小人は若者に頭を下げると、若者に言いました。
「どうか、お金をめぐんでくだされ」
「うん? この銅貨かい? いいよ」
 人の良い若者は、三枚の銅貨を気前良くあげました。
 すると小人は、とても喜んで言いました。
「お礼に、何かを差し上げますよ。何でも欲しい物をおっしゃってください」
「じゃ、ヴァイオリンをくれよ」
「ヴァイオリンですか。それなら、良いのがありますよ。 それをひくと、みんながおどり出すやつが」
 小人は背中に背負った袋からヴァイオリンを取り出すと、それを若者に渡しました。
「わあ、すてきなヴァイオリンだ。ありがとう」
 若者はうれしくなって、ヴァイオリンをかなでながら旅を続けました。

 しばらくすると年寄りの木こりが、若者を呼び止めました。
「お前さん、銀貨一枚やるから、ここの木を切っとくれよ」
「いいよ」
 若者は引き受けると、おじいさんのオノで大木を切り倒してあげました。
 すると年寄りの木こりは、
「なんだ。こんなにかんたんに切り倒せたのか。これなら、銅貨一枚でよかろう」
と、銀貨をくれる約束なのに、銅貨しかくれなかったのです。
「さあ、金を受け取ったら、はやく行け」
 木こりが若者を追い払おうとするので、若者は手にしたヴァイオリンをひきはじめました。
 すると木こりが、おどりを始めたのです。
「ど、どうしたんじゃ? わしは、おどりたくなんかないぞ!」
 木こりはわめきましたが、体が勝手におどり続けます。
 そのうちに息が苦しくなって、若者に言いました。
「助けてくれ! ヴァイオリンをやめてくれ! 約束通り、銀貨をやるから!」
 若者がヴァイオリンをやめると、木こりのおどりがやっと止まりました。
 そして木こりは約束の銀貨を払うと、若者をうらんで役人にうったえました。
「旅の若者が、この年寄りから銀貨をだまし取りました。どうか、つかまえてください!」
 それを聞いた役人たちは若者を追いかけると、すぐにつかまえて言いました。
「年寄りをだまして銀貨を取り上げるやつは、死刑だ!」
 すると若者が、役人たちに頼みました。
「では死ぬ前に、一度だけヴァイオリンをひかせてください」
「いいだろう」
 木こりが止めるのも聞かずに、役人は若者にヴァイオリンを渡しました。
 若者はそれを受け取ると、ヴァイオリンをひきました。
 そのとたん、役人たちばかりか町中の人々がおどりはじめ、やがてイヌやネコまでもがおどり出したのです。
「た、たのむ。ヴァイオリンをやめてくれ!」
 役人たちは、若者に頼みました。
「いいですよ。ぼくがお金をぬすんだんじゃないと、信じてくれるのなら」
「わかった。あんたは悪くない」
 役人たちが答えたので、若者はヴァイオリンをやめるとまた旅を続けました。

おしまい

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