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第27話

悪魔をだましたイワン

悪魔をだましたイワン
ベラルーシ共和国の昔話 → ベラルーシの国情報

 むかしむかし、病気のおじいさんが死ぬ前に、三人の息子に言いました。
「わしは貧乏で、お前たちに残す物が何もない。悪いが、こんな物でがまんしておくれ」
 おじいさんは一番上の息子に黄色いネコをやり、二番目の息子にはひきうすを、一番下の息子のイワンには、わらじをつくる木の皮をやりました。
 おじいさんが死んでしまうと、一番上のお兄さんが弟たちに言いました。
「これから順番に別の国へ行って、運だめしをしよう。うまくいけば、大金持ちだ」

 黄色いネコをだいた一番上のお兄さんは別の国に行くと、ある家に泊めてもらいました。
 すると家の人が、こんな事を言いました。
「旅のお方、この国はどの家もネズミだらけなのです。ネズミにかじられないように、注意してください」
「心配いりません。何とかなるでしょう」
 一番上のお兄さんは、黄色いネコとゆかの上で寝ました。
 次の朝、家の人は目を覚ましてビックリです。
 なんとゆかの上にネズミの死がいが山のようにつんであって、そのそばで黄色いネコがのどをゴロゴロならしていたからです。
 この国には、ネコという動物がいなかったのです。
「ネズミをやっつけるとは、なんとすばらしい! 旅のお方、この不思議な動物を売ってください」
「いえ、これは死んだおじいさんのかたみですから、売る事は出来ません」
 一番上のお兄さんはことわると、家を出て行きました。
 しかしこの話は、たちまちこの国の王さまの耳に入ったのです。
「ネズミをやっつける動物がいるとは、とても信じられん」
 王さまは一番上のお兄さんをよぶと、城に泊まらせました。
 すると黄色いネコが、一晩で城中のネズミをやっつけたのです。
 山のようなネズミの死がいを見て、王さまは一番上のお兄さんに言いました。
「欲しい物は、何でもをあげよう。だからその動物を、ゆずってくれ」
「それでは王さま。わたしが持って帰れるだけの銀貨をくだされば、このネコを差し上げましょう」
「おおっ、それぐらい、簡単な事だ」
 王さまは城中の銀貨を集めると、一番上のお兄さんが持って帰れるだけあげました。
 こうしてお金持ちになった一番上のお兄さんは自分の国に帰ると立派な家を建てて、かわいいお嫁さんをもらって幸せに暮らしたのです。

 さて、一番上のお兄さんがお金持ちになった事を知った二番目のお兄さんは、
「今度は、おれの番だ」
と、おじいさんのかたみのひきうすを持って、家を出て行きました。
 そして別の国に行った二番目のお兄さんは森の中に小屋を見つけると、その小屋のすみで寝ることにしました。
 しかしその小屋は、ドロボウたちのかくれ家だったのです。
 仕事を終えたドロボウたちは小屋に帰ってくると、ぬすんだ金貨をゆかにつみあげました。
「よしよし、これだけあれば、一生遊んで暮らせるぞ」
 その時、小屋のすみで寝ていた二番目のお兄さんが、ごろりと寝返りをうちました。
 するとはずみでひきうすが転がって、
 ガラガラガラン!
と、大きな音をたてました。
「うひゃ! お化けだー!」
 おどろいたドロボウたちは金貨を放り出して、そのまま逃げてしまいました。
 その騒ぎに目を覚ました二番目のお兄さんは、小屋中にちらばっている金貨をひろい集めて国へ帰りました。
 そして一番目のお兄さんと同じように大きな家を建てると、かわいいお嫁さんをもらって幸せに暮らしたのです。

 さて、一番上と二番目のお兄さんがお金持ちになった事を知ったすえっ子のイワンは、
「今度は、ぼくの番だ」
と、おじいさんのかたみのわらじをつくる木の皮を持って、別の国に出かけました。
 ある沼地のそばまで来ると、イワンのはいていたわらじがボロボロになってきました。
「うーん、おじいさんのかたみの木の皮で、新しいわらじを作ろうか」
 イワンは沼地のそばにすわって、新しいわらじを作るために木の皮をさきはじめました。
 すると沼の中から、悪魔(あくま)が現れたのです。
 悪魔は木の皮をさいているイワンを見ると、不思議そうに言いました。
「やあ、イワン。何をしているんだね?」
「見ればわかるだろう。木の皮で、ひもを作っているんだ」
「それを、何に使うのかね?」
「何って・・・」
 イワンは少し考えると、悪魔に言いました。
「この沼からお前たち悪魔を引っ張り出して、市場(いちば)で売ろうと思っているんだ。なにしろ悪魔は、高く売れるからね」
 それを聞いた悪魔は、ビックリです。
「ちょっと、待ってくれよ! イワン、いや、イワンさん。何でもほしい物をあげるから、それだけはかんべんしてください」
「そうだな。それじゃあ、このボウシにいっぱいの宝石をくれれば、ゆるしてやろう」
「わかった。沼に宝石を取りに行くから、ちょっと待ってください」
 悪魔が宝石を取りに帰ると、イワンは地面に深い穴をほって、その上に穴を開けたボウシをのせました。
 やがて悪魔が宝石の入った袋を持ってくると、イワンのぼうしの中に宝石を流し込みました。
(こんな小さなぼうしなら、すぐにいっぱいになるだろう)
 悪魔はそう思いましたが、けれど宝石はちっともたまりません。
(おかしいなあ?)
 首をかしげた悪魔は、仕方なくまた宝石の袋を取りに行きました。
 しかし宝石は、まだいっぱいになりません。
(なぜだろう?)
 悪魔はまた、宝石の袋を取りに帰りました。
 そしてこれを三回繰り返して、ようやくボウシはいっぱいになりました。
「意外とよく入るぼうしだったな。さあイワン、重いだろうから持つのを手伝ってやるよ」
「いや、一人で持てるから、手伝ってくれなくてもいいよ」
「えんりょするな。どんなに重い物でも、悪魔の力を使えばかんたんさ。それっ!」
 悪魔はそう言うと、イワンのぼうしを持ち上げました。
 そしてぼうしの下に、深い穴が開いているのを知ったのです。
 悪魔はそれを見て、カンカンに怒りました。
「こいつ、よくもだましたな! どうしてやるか、親分に聞いてくるから待ってろ!」
 話を聞いた親分は、悪魔の中で一番の力持ちの悪魔をイワンのところへやりました。
 力持ちの悪魔は沼から飛び出すと、イワンに言いました。
「すもうで勝負だ! お前が勝ったら金貨をやるが、負けたらお前の命をもらうぞ!」
 悪魔は大男で、とてもイワンが勝てる相手ではありません。
(まいったなあ。どうしたらいいんだろう?)
 イワンがキョロキョロとあたりを見回すと、向こうのモミの木の下に大きなクマがいました。
 イワンはにっこり笑うと、悪魔に言いました。
「いいだろう。だがお前ぐらい、おれがわざわざやる事もない。あそこにおれのじいさんがいるから、まずはじいさんとやってみろ」
「わかった」
 力持ちの悪魔はクマのところヘ行くと、クマに言いました。
「さあこい。イワンのじいさん」
 悪魔はクマとすもうをはじめましたが、いくら悪魔でも力でクマに勝てません。
 投げ飛ばされた悪魔は、親分のところへ逃げ帰りました。
「とてもだめです。イワンのじいさんにだって、かないません」
 それを聞いた親分は、今度は一番足のはやい悪魔を送りました。
「イワンよ。かけっこで勝負だ」
「いいだろう。だがその前に、あそこにいるおれの息子とやってみろ」
 イワンは野原にいるウサギを、指さして言いました。
 足のはやい悪魔は、さっそくウサギの方へ行きました。
 しかしウサギは悪魔を見て、ピョンピョンと逃げていきます。
「こら待て、待つんだ」
 足のはやい悪魔はウサギを追いかけますが、いくらがんばってもウサギに追いつく事が出来ませんでした。
「親分、だめです。イワンの息子にさえ、勝つ事が出来ませんでした」
 それを聞いた親分は、今度は口笛の名人の悪魔を送りました。
「口笛のうまい方が、金貨を取ることにしよう」
「いいとも。まず、お前さんからだ」
♪ピー、フィラフィラピー
 悪魔が口笛を吹くと、その口笛のあまりのうまさに森中の草木が感動して、きれいな花を咲かせました。
 イワンも口笛は得意ですが、とてもここまで上手には吹けません。
 しかしイワンは、得意げに言いました。
「今度は、こっちの番だな。さて悪魔くん、しっかりと目をしばっておいた方がいいよ。さもないと感動あまり、きみの目玉が飛び出してしまうからね」
 悪魔はおどろいて、布でかたく目をしばりました。
「さあ、吹いてくれ」
 悪魔が言うと、イワンはこん棒をふりあげて、悪魔の頭を力一杯たたきました。
 あまりの痛さに、悪魔の目玉が飛び出しそうです。
「さあ、これはほんの小手しらベ。今度はもっと、上手に吹くぞ」
「や、やめてくれ。もうたくさんだ。金貨はお前にやるから、口笛だけはやめてくれ」
 こうして山のような金貨を手に入れたイワンは、国へ帰ると二人のお兄さんと同じように大きな家を建て、かわいいお嫁さんをもらって幸せに暮らしたのです。

おしまい

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