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第41話
五粒のエンドウ豆
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投稿者 「あーる」 【眠れる朗読】
エンドウ豆のさやの中に、五粒の豆が並んでいました。
さやも緑色、五粒の豆も緑色、それで五粒のエンドウ豆は、
「きっと世界中が、みんな緑色をしているんだ」
と、思っていました。
やがてエンドウ豆のさやは、黄色になりました。
五粒の豆も、そろって黄色になりました。
そこで、みんなはいいました。
「世界中が、黄色くなった」
それからみんなで、こんなお話を始めました。
「もうすぐ、さやがはじけるよ。そうしたら、ぼくたちは外へ飛び出すんだ」
「外に出たら、どうするの?」
「だれかが、きっと待っているんだ」
すると、そのときです。
突然、みんなの入っているさやを引っぱった者がありました。
小さな男の子の手のひらです。
「あ、さやがはじける」
五粒のエンドウ豆がさけびました。
パチン! コロコロコロ。
五粒のエンドウ豆は、そろって外にころがり出ました。
「うわっ、まぶしい!」
五粒のエンドウ豆は、はじめて見た空と、お日さまの光にビックリです。
ところが、ビックリしたのはそれだけではありません。
男の子はポケットから豆鉄砲を取り出すと、一番目のエンドウ豆を豆鉄砲につめこみました。
そして、
ズドン!
一番目のエンドウ豆はさけびました。
「ぼくはいくよ。もっと広い世界に」
二番目のエンドウ豆も、豆鉄砲につめこまれました。
ズドン!
「ぼくはいくよ。お日さまのところへ」
三番目と四番目のエンドウ豆は、コロコロと逃げ出しました。
「ぼくたちは、ころがっていくんだ。まだ眠いから」
でも、ズドン! ズドン!
やっぱり豆鉄砲に入れられて、うたれてしまいました。
いよいよ、いちばんおしまいの五番目のエンドウ豆の番です。
「さようなら」
五番目のエンドウ豆は、空を飛んでいきました。
そして、小さな屋根裏ベやのまどの下の、ほんの少し、やわらかな土のたまっている所に落ちたのです。
さて、その小さな屋根裏ベやには、貧しいお母さんと病気の女の子が住んでいました。
女の子はお母さんが仕事にいってしまうと、一日じゅう、ひとりでベッドに寝ているのです。
ある日のことです。
お母さんが仕事から帰ってくると、女の子がいいました。
「見て、まどの所に緑色の物が見えるのよ。あれは、なあに?」
お母さんは、まどをあけてみました。
エンドウの葉っぱです。
土の上に落ちたエンドウ豆が、芽を出していたのです。
女の子も、お母さんも喜びました。
さびしがっていた女の子は、どんどんのびるエンドウ豆を見ていると、自分も元気になるような気がしました。
そして本当に、一日一日と病気がよくなってきたのです。
「あたし、もう病気がなおったわ。どうもありがとう。エンドウ豆の小さいお花さん」
五番目のエンドウ豆の花は、すっかり元気になった女の子を見て、うれしそうに風にゆれていました。
でも、ほかのエンドウ豆はどうなったでしょう?
一番目のエンドウ豆も、二番目のエンドウ豆も、三番目のエンドウ豆も、ハトに見つかって食べられてしまいました。
でも、ハトが喜んで食ベたので、エンドウ豆も喜んでいました。
ところが、四番目のエンドウ豆はドブに落ちて、こういっています。
「ぼくは、えらいんだ。ドブの水をたくさん飲んで、こんなに大きくふくれてるんだから」
おしまい
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