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第81話
水車小屋で大もうけ
ロシアの昔話 → ロシアの国情報
むかしむかし、ある水車(すいしゃ)小屋で、一人の若者がはたらいていました。
ある日のこと、主人が若者にいいつけました。
「こなにするムギを、はこの中にいれておけ」
ところが若者は、それをわすれてしまい、うっかり石うすの上にのせたままにしておきました。
それで水車がまわりだすと、ムギはあたりいちめんにとびちって、もう、どうすることもできなくなってしまいました。
やがて水車小屋にやってきた主人は、このありさまを見て、たいそうはらをたてて、
「でていけ! おまえのようなやつは、もうクビだ!」
そういって、若者をおいだしてしまいました。
若者はしかたなく、うちへかえろうとブラブラとあるいていきましたが、そのうちに日がくれてきたので、山の中の人のいない水車小屋を見つけて、その夜はそこにとまることにしました。
ところが、若者が水車小屋にはいっていったすぐあとで、こわいかおをした三人の男たちがはいってきました。
ビックリした若者は、大あわてでそばにあったムギをいれる大きなはこの中にかくれると、ジッと耳をすましていました。
どうやら三人の男たちは、ドロボウのようです。
そしてぬすんできたお金を、三人でわけあっているようすです。
「おれは、おれのぶんをひきうすの下にかくすとしよう」
一人がそういうと、もう一人の男が、
「おれは、車のところへかくすことにする」
そして、三人目の男がいいました。
「おれは、あのムギをいれるはこにかくすとしよう」
さあ大へんです。
若者がかくれているはこに、お金をかくすというのです。
もしドロボウたちに見つかったら、若者はころされてしまうかもしれません。
こわくてこわくて、からだがブルブルふるえてきました。
でも、若者はかくごをきめると、
(ビクビクしていてもしかたがない。どうせ見つかるのなら、こちらから声をだして、あいつらをおどかしてやろう)
そうかんがえると、若者はまるで、そばになかまがたくさんいるかのように、一人一人によびかけるようなちょうしでさけびました。
「おいデニス、おまえは下にまわれ! フォーマーはよこから見ていろ! そこのわかいやつは、うしろからいけ! わしは、こちらからいくからな。いいか、一人だってにがすんじゃないぞ!」
それはまるで、だれかがドロボウたちをつかまえようと、うごきまわっているようにきこえました。
ビックリしたのは、ドロボウたちです。
「たいへんだ! おおぜいのれんちゅうが、おれたちをおっかけてくるぞ」
ドロボウたちはぬすんできたお金をほうりだして、どこかへにげていってしまいました。
そのあと若者は、はこからでてきました。
「よし。にげていったぞ。ざまあみろ」
若者は、ドロボウたちがおいていったお金をかきあつめると、水車小屋を出て、いそいでじぶんの家へかえっていきました。
家につくと、若者はお父さんとお母さんに、ドロボウたちのはなしをすっかりはなしてきかせ、とりあげてきたお金をさしだしました。
「お父さん、このお金で鉄砲(てっぽう)をかって、かりにいこうじゃありませんか」
若者がそういうとお父さんもさんせいして、二人で馬車(ばしゃ)にのって町の市場へいき、鉄砲を二丁かいました。
さて、そのかえり道のことです。
若者が、お父さんにはなしかけました。
「ウサギかキツネにでくわすかもしれませんよ。きをつけていましょう」
でも、そのうちに二人ともねむくなって、馬車にゆられながらグッスリとねむってしまいました。
するとそこへ、とつぜん二匹のオオカミがあらわれました。
オオカミはいきなりとびかかって、ウマをムシャムシャとたべてしまいました。
二人ともそれには気づかずに、まだねむっています。
しばらくたって、ようやくお父さんが目をさましました。
お父さんは馬車をひっぱっているのが、ウマではないことにきづきました。
なんと、ウマをたべてしまった一ぴきのオオカミが、そのままくびわの中にあたまをつっこんで、馬車をひっぱっているのです。
しかたなくお父さんは、そのままたづなをひっぱって馬車をはしらせました。
そのとき、もう一ぴきのオオカミが、うしろのほうから若者にとびかかろうとしました。
若者がムチをふりあげて、それをたたこうとすると、オオカミは大きな口をあけて、そのムチにかみつきました。
ところがムチのさきについているむすびだまが、オオカミの歯のあいだにはまりこんで、とれなくなってしまいました。
それで若者は、そのままオオカミをひっぱっていくことにしました。
一ぴきのオオカミは馬車をひっぱり、もう一ぴきはムチにひっぱられてすすんでいくのです。
こうして二人が家のまえまでかえってくると、イヌがとびだしてきて、オオカミにほえかかりました。
オオカミはおどろいて、馬車のまえとうしろでバタバタとあばれます。
お父さんはけんめいにそれをしずめようとしましたが、どうしてもだめで、しばらくするうちに、とうとう馬車がひっくりかえってしまい、若者とお父さんは馬車からほうりだされてしまいました。
そして馬車がひっくりかえったはずみで、まえのオオカミはくびわからぬけだすことができました。
うしろのオオカミも、若者がムチを手からはなしたので、二ひきはそろって、けんめいににげていってしまいました。
「おやおや、これでえものはすっかりなくなってしまった」
お父さんはガッカリしましたが、若者はげんきな声で、
「えものはなくても、たのしいことがたくさんあったから、それでいいじゃありませんか」
そういって、たのしそうにわらいました。
おしまい
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