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第106話

ふしぎな腕輪

ふしぎな腕輪
タイの昔話

 昔々、タイのある村にいたずら好きの少年が住んでいました。
 いたずら小僧は毎日、村の大人たちや子供たちに色々ないたずらをしては、みんなを困らせていました。

  ある日のこと、いたずら小僧は二人の村人が何かを話をしているのを立ち聞きしてしまいました。
 その話はピー・パー(タイ語で森の精霊のこと)関するうわさでした。
 村人の一人が
「おい、この寺の裏の森には夜、お化けがたくさん出るらしいぞ。
 その親玉がピー・パーだ。」
と言うと、もう一人の村人が
「ピー・パーは森の真ん中に住み、白い布をまとっていて、手首には姿を消す力があるふしぎな金の腕輪をはめているらしいぞ。」
と言いました。
 さらに続けて
「わしはピー・パーに出会う方法を知っているぞ。
 ピー・パーの好物はアツアツのスープだ。
 陰暦の14日、夜の12時になったらスープを温め、アツアツをお椀に入れた後森の真ん中へ行くといいみたいだぞ。
 ただし、ピー・パーの顔を見てはいけないらしいぞ。
 もし見てしまったら、やばいことになるかもしれないぞ。」
というものでした。
 この話を聞いたいたずら小僧は「怖いのを我慢して、そのふしぎな腕輪を手に入れてやるぞ。」と、さっそく陰暦の14日にスープを作り、夜の12時にそれを温めてお椀に入れ、寺の裏の森の真ん中まで行きました。
 途中、たくさんのお化けたちが「スープをくれ。」と言ってきますが、いたずら小僧は誰にもやりませんでした。
 すると村人たちの言う通り、本当にピー・パーが現れました。
 ピー・パーは「おいしそうなスープだな。俺にもくれ。」と言いました。
 いたずら小僧は顔を見ないようにして、「いいよ。ただし、あんたがはめているふしぎな腕輪と換えてほしいな。」と言うと、そのピー・パーがはめているふしぎな腕輪とスープを交換しました。
 そして、家へ帰ろうとすると、なんとお化けたちが、いたずら小僧の後をついてくるのではありませんか。
 いたずら小僧はとても怖くなって、走って逃げました。
 逃げる途中、いたずら小僧は試しに、ふしぎな腕輪を自分の手首にはめてみました。
 すると不思議なことに、いたずら小僧の姿が、お化けたちの前からパッと消えたのではありませんか。
 さすがのお化けたちも、追跡をあきらめて帰るしかありません。
 こうして、いたずら小僧はふしぎな腕輪を手に入れることに成功しました。
 ふしぎな腕輪を手に入れたいたずら小僧が家に帰ると、それを自分の手首から外しました。
 すると、再びいたずら小僧が姿を現したのではありませんか。
 いたずら小僧は、はめると姿が消えるふしぎな腕輪を手に入れたおかげで、とてもうれしい気持ちになりました。
 そして「ひっひっひ。これで思う存分、いたずらができるぞー!」と言うと、次の日、さっそくそれをはめて、大きな町へ出かけていきました。
 町へやってきたいたずら小僧は、一人の女の子が串に刺さったカットパイナップルを持って歩いているところに出くわしました。
 いたずら小僧は、「よーし、最初のターゲットはあの女の子だ!」と言って近づきました。
 そうとは知らない女の子は、手に持っていた串刺しのカットパイナップルを食べようとしました。
 その時、なんと串刺しのカットパイナップルが、女の子の手から離れてプカプカと浮き始め、しかも量が減っていくのではありませんか。
 女の子は、「キャーッ!お化けが出たー!」と言って泣き出してしまいました。

 次にいたずら小僧は、一人の少年がタイ風唐揚げを持ってベンチに座っているのを見つけて近づきました。
 少年がタイ風唐揚げを食べようとした次の瞬間、なんとタイ風唐揚げが、次々とプカプカ浮いては消えていくのではありませんか。
 少年は、「な、何だ⁈か、唐揚げがプカプカ浮いている!しかも次から次へと消えていくぞ‼」と言って驚きました。
 こうして、ふしぎな腕輪の力で透明人間になったいたずら小僧は毎日、町へ出かけてはひどいいたずらをするようになりました。
 お坊さんの袈裟を脱がせたり、昼寝中の少女の顔に落書きをしたり、竹馬で遊んでいた男の子から、竹馬を奪って乗り回した挙句に壊したり、セパタクローをしている少年たちの邪魔をしたり、屋台を荒らしたり、挙句の果て、大きな寺に入ってお供え物を盗んだりとやりたい放題!いたずら小僧によるいたずらは、日に日にエスカレートしていきました。
  この事態を見て、大変困り果てた者がいました。
 大きな町の真ん中のお城に住んでいる王様です。
 王様は、『姿の見えないお供え物泥棒を捕まえたものは、沢山の褒美を取らせる。』と、お触れを出しました。
 そのお触れを見て、立ち上がった者たちが現れました。正義感の強い町の少年たちです。
 彼らはリーダーの少年の家に集まり、「どうしたら、姿が見えないお供え物泥棒を捕まえることができるだろうか?」と相談をしました。
 その結果、大きな寺の前に、大量のバナナの皮をばらまき、いたずら小僧がそれを踏んで滑って転んだところを捕らえる作戦にたどり着きました。

  いよいよ作戦実行の日、少年たちは大量のバナナの皮をばらまいた後、自分たちは建物の陰に隠れて様子を見ていました。
 そうとは知らないいたずら小僧は、いつものように大きな寺の前に来ました。ところが次の瞬間、大量のバナナの皮を踏んでツルリ。
 すってんころりと転んでしまいました。
と、それと共に、いたずら小僧の手首にはめていたふしぎな腕輪が外れ、空高く飛んで行ってしまったのです。
 いたずら小僧は、「しまった!」と気づきましたが、もう後の祭りでした。
 とうとういたずら小僧は、町の少年たちに取り囲まれ、捕まってしまいました。
 こうして捕らえられたいたずら小僧は、王様の前に引っ立てられました。
 王様は、「お供え物を盗んだのはお前か!」と問い詰めると、いたずら小僧は恐怖のあまりガタガタブルブルと震えながら、「は、はい、そうです。」と正直に答えました。
 そして、「王様、ごめんなさーい!もういたずらはしませーん!死刑だけは勘弁して下さーい!」と、泣きながら訴えました。
 そこへ、一人の立派なお坊さんがやってきて、
「あの、お供え物を盗んだ少年はまだ子供。
 命だけは助けてやったらどうですか?
 私がその少年を悔い改めさせて見せます。」
と、王様に言いました。
 王様は「なるほど。」と言って、いたずら小僧の処分をお坊さんに任せることにしました。
 こうして、いたずら小僧はお坊さんに引き取られました。
 その後、いたずら小僧は頭を丸めて小坊主にされた挙句、お寺で修行する羽目になってしまいました。
 それに引き換え、いたずら小僧を捕らえた町の少年たちは、王様からたいそう褒められたということです。
 いたずらはいけませんね。

おしまい

お話の投稿者 山本寛子

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