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第107話
ウサギのお嫁さん
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むかしむかし、ウサギがキャベツ畑に、ピョンピョンピョンと、はねながらやって来ました。
「しっ、しっ。キャベツを食べてはだめよ」
女の子が手を振ると、ウサギは短い尻尾を振って言いました。
「おいで、かわいい女の子。わたしの尻尾へ乗って、わたしのお家へいらっしゃい」
「尻尾に、乗っていいの?」
「もちろん、さあ、しっかりつかまりなよ」
女の子が尻尾につかまると、ウサギはピョンピョンピョンと畑をよこぎって、ウサギの家にやって来ました。
そしてウサギは、女の子を台所へ入れました。
「かわいいわたしのお嫁さん。キャベツで、お料理をつくっておくれ。わたしは、友だち呼んでくるから」
ウサギはうれしそうに、長い耳を振りながら出ていきました。
間もなくウサギは、大勢の友だちを連れてきました。
カラスの牧師(ぼくし)さんも、黒い服を着て来ました。
ウサギが、女の子を呼びました。
「かわいいわたしのお嫁さん。お客さまが、おそろいだよ。出ておいで」
それを聞いた女の子は、シクシクと泣き出しました。
ウサギのお嫁さんになるのが、嫌だからです。
ウサギが、また女の子を呼びました。
「お嫁さん、お嫁さん。お客さまが待っているよ。はやく出ておいで」
女の子は小さなイスに、自分のボウシをかぶせました。
そして自分の服も、着せました。
自分のクツしたも、はかせました。
女の子は、自分の身代わりを作ったのです。
そして女の子は、裏口からコッソリと逃げ出しました。
ウサギが、また呼びました。
「お嫁さん、お嫁さん。あんまりおそいと、お客さまはお帰りだよ」
「・・・・・・」
返事が、ありません。
ウサギは、台所へ行きました。
「はやくしなよ。はやくしないと、だめだよ」
ウサギはトントントンと、お嫁さんのボウシをたたきました。
するとボウシが、ポトンと落ちました。
服も、スルリと脱げました。
そこにあったのは、女の子のクツしたをはいたイスだけです。
「ややっ。お嫁さんに、逃げられてしまったよ」
ウサギは結婚式に来ていた友だちに、笑われてしまいました。
おしまい
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