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第109話

制作: 世界名作福袋 朗読 : 劇団SHOWA ひろみ&ポポコ 絵 : Taku
制作: 世界名作福袋 朗読 : 劇団SHOWA ひろみ&ポポコ 絵 : Taku
みつばちのお城に、マーヤという女の子がいました。
マーヤは、まだお城の外に出たことがありません。
「お城の外はどうなってるんだろう?」
と、いつも想像しています。
ある日、カッサンドラ先生がやってきて、言いました。
「マーヤ、あなたもお城の外に出る時がきたわ。蜜を集める仕事を始めるのよ。」
外に出られると知って、大喜びのマーヤに、先生は言い聞かせるのです。
「まず、このみつばちの城の目印を覚えなさい。それは、大きな菩提樹の木です。外に出たら、スズメバチに気をつけなさい。お尻の針は、とても強い武器ですが、一度使うと死んでしまいます。それはよく覚えておきなさい。さあ、マーヤも、みんなと力を合わせて、蜜を集めていらっしゃい。」
先生は真剣におっしゃいましたが、マーヤの心は、まだ見たことのない外の世界のことでいっぱいでした。
いよいよ飛び立つ朝がきました。
「どうやったら飛べるんだろう?」
「私と同じように羽を動かせばいいのよ。」
お姉さんたちのまねをして、羽を震わせると、マーヤは、空に浮かびました。
「飛んでる!飛んでる!」
朝日が菩提樹の木にキラキラと光っています。
「わぁ!外の世界は、なんてきれいなの!」
「マーヤ、お花畑はこっちよ。」
飛ぶのに夢中なマーヤの耳に、その声は届きません。
気がつくと、お姉さんたちの姿はどこにもありませんでした。
それでも、気にせず、マーヤは飛び続けました。
「外の世界は、なんて素敵なのかしら。もっともっと色々なものを見てみたい。」
そこで、マーヤは、冒険の旅に出ることにしました。
マーヤは、きれいな花や草の上を飛び続け、くたびれると、花にとまって、おいしい蜜を飲みました。
やがて、あたりが暗くなり、マーヤは釣鐘草の花の中で眠りました。
次の日は雨でした。
「困ったなぁ。羽が濡れちゃう。」
「おいらは平気だよ。」
得意そうな声がして、釣鐘草の根元から、虫が出てきました。
「おいらは糞ころがしのクルト。」
「私はみつばちのマーヤ。」
クルトは、マーヤを見上げたひょうしに、ころんと、ひっくり返ってしまいました。
「助けて!おいらは背中が丸くて、独りじゃ起きられないんだ。起きられないと、死んじまう。」
マーヤは、何とかしてクルトを助けようと思いました。
急いで、そばに生えていた長い草をしならせると言いました。
「この草につかまって!」
マーヤは、羽がびしょ濡れになるのもかまわずに、クルトを引っ張りあげました。
「ありがとう。危なかった。」
次の日は、素晴らしいお天気でした。
マーヤは長い脚のバッタに会いました。
バッタのあいさつは、とても変わっていました。
ヒューンと飛んできて、一言言うと、ピョーンと飛んでいってしまって、あら、っと思っていると、また、ヒューンと戻ってきて続きを言うのです。
つまり、こうです。
「へーイ!そこの可愛いミツバチちゃん。君の世界にジャンプインしてもイイかな(クレッシェンド)? わしは、永遠に跳ね続けるバッタ界のレジェンド。名前はグラスホッピヤー(デクレッシェンド)。 わしは、決して追いかけない。跳ねて追い抜くのさ。見た目は枯れてても、ハートはエバーグリーンさ(クレッシェンド)。 それじゃ、君もプレミアムな旅を。バーイ!ベイビー(デクレッシェンド)!」
マーヤは旅を続けました。
ある日、木イチゴの間をすり抜けようとしたその時、
「あれ?何かしら?」
顔や羽に変なものがからみついたかと思うと、たちまち体が動かせなくなりました。
それなのに、なぜか、宙に浮かんだままです。
マーヤは、クモの巣にかかってしまったのです。
クモが近付いてきます。
「キャーーー!」
と、マーヤが叫んだ時、木の下をクルトが通りかかりました。
「クルトさん!助けて!」
「うん?マーヤじゃないか。あっ!クモの糸だな。よし、待ってろ!」
クルトは、マーヤの声を聞くと、木に這い上がり、鎌のような前脚でクモの糸を切って助けてくれました。
クルトはマーヤに助けられたことを忘れていなかったのです。
「ありがとう。クルト。」
「恩返しができてよかったよ。」
マーヤはさらに飛び続けました。
すると、木の根元にいるムカデが言いました。
「あの藪には近付かない方がいいよ。スズメバチがいるからね。あんたなんか捕まえられて食べられちまうよ。」
マーヤは、すぐさま遠くへ逃げ出そうとしました。
その時、いきなり、後ろからマーヤを捕まえた者がいます。
「俺さまはスズメバチ。お前を食ってやる。」
「やめて!やめて!お尻の針で刺すからね!」
「刺しても無駄さ。お前の針じゃ、俺さまの体を突き通せやしない。」
マーヤは、怖さのあまり気を失ってしまいました。
気がつくと、牢屋の中でした。
「こんなことになるなら、旅になんか出るんじゃなかった。」
泣いているマーヤの耳に、スズメバチの女王の声が聞こえてきました。
「皆の者、よく聞け!夜明けに、みつばちの城を襲うのだ!」
「おーー!!」
マーヤはブルブルと震えました。
けれど、怖がりながらも、強い気持ちが湧き上がってきました。
「お城のみんなを助けなきゃ!」
マーヤは、そこら中をかじって、やっとのことで、牢屋から逃げ出し、夜の空に飛び出しました。
羽がちぎれるほど激しく飛び続けると、懐かしい菩提樹の木が見えてきました。
みちばちのお城に帰ってきたのです。
「女王さま!女王さま!大変です!スズメバチが攻めてきます!」
女王さまは、直ぐに、みんなに命じました。
「城の入り口をしっかりふさぎなさい!厚く、しっかりとです。みんなで、このお城を守るのです!」
夜が明けると、スズメバチの大群が襲いかかってきました。
でも、しっかりと塞がれた入り口のドアはどうやっても破ることができません。
「なんで、こんなに守りが固いんだ。俺たちが攻めて来るのを知っていたのか?」
とうとう、スズメバチたちは、あきらめて帰っていきました。
マーヤが命がけで知らせたおかげで、スズメバチを追い払うことができたのです。
マーヤは、冒険の旅に出たことを、みんなに謝りました。
カッサンドラ先生は、
「みんな、マーヤのことをとても心配していたのですよ。これからは、決して勝手な行動はしないように。」
でも、女王さまは、
「あなたが知らせてくれたおかげで、私たちはみんな助かりました。」
と、マーヤを優しく抱きしめてくれました。
時が経って、そのマーヤも、今ではすっかり大人になりました。
時々、みつばちの子供たちに、自分の冒険の話をしてあげるのだそうです。
おしまい。
関連する記念日紹介
「3月8日 ミツバチの日」について (366日への旅)より

記念日イメージキャラ 福ちゃん イラスト「ぺんた」 ※無断転載禁止
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