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第118話



三人兄弟
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投稿者　「ひつじも眠る朗読チャンネル」　　【眠くなる女性の声で読み聞かせ】おやすみグリム童話集（睡眠用）

　むかしむかし、三人の息子を持つ男がいましたが、この男の財産(ざいさん)といえば住んでいる家しかありません。
「息子が三人いるのに、家は一つしかない。さて、息子の誰にこの家をやろうか？」
　男はある名案(めいあん)を思いついて、三人の息子に言いました。
「お前たちも、もう大人だ。
　これからお前たちは家を出て、好きな仕事をしなさい。
　そしてお前たちが帰って来た時、一番すぐれた腕前を見せた者に、この家はやるとしよう」
「はい。分かりました」
　男の提案に、息子たちは賛成しました。

　長男は、ウマのかなぐつを打つかじ屋に、
　次男は、髪の毛を切る床屋(とこや)に、
　それから三男は、剣術(けんじゅつ)の先生になると言いました。
　そして帰って来る日を決めて、三人は旅に出ました。

　それから三人は、それぞれの仕事を頑張って立派な腕前を身につけました。
　長男のかじ屋は、王さまのウマのかなぐつを打つまでになりました。
　次男の床屋は、金持ち専門の床屋になりました。
　三男の剣術の先生は、とても強い剣術の先生になりました。
　そして約束の日になり、三人の息子は自分の家に集まりましたが、それぞれが違う仕事の為、どうやって腕比べをすれば良いのかわかりません。
「困ったな。どうしようか」
　三人が相談していると、三人の前に一匹のウサギが現れました。
　それを見た次男の床屋は、
「おう、こいつはおあつらえむきだ」
と、言うと、洗面器(せんめんき)に顔をそる為の石けんをといて、走るウサギの顔に塗りつけると、よく切れるカミソリでウサギのヒゲだけをそり落としたのです。
　あまりの早業に、ウサギは自分のヒゲがそられた事に気づいていません。
　もちろん、ウサギには傷一つありません。
　それを見た父親が、喜んで言いました。
「こいつは素晴らしい！　どうやら家は、お前の物だな」
　すると間もなく、一人の紳士が馬車(ばしゃ)を飛ぶ様に走らせてきました。
「今度ははわたしの出番です。お父さん、わたしの腕前を見ていてください」
　長男のかなぐつ屋は馬車を追っかけて行くと、走るウマからかなぐつを四つはずして、新しいかなぐつをウマの足に取りつけました。
　もちろんウマは、飛ぶ様に走ったままです。
「大したもんだ！　お前の腕前は、決して弟に負けていないぞ」
　父親が喜んでいると、パラパラと雨が降ってきました。
　それを見て、三男の剣術の先生が言いました。
「お父さん、わたしの腕前も見てください」
　三男は自分の短刀を抜くと、それを頭の上で十文字に振りました。
　すると雨は、全て短剣にはじかれてしまいました。
　そのうち雨はだんだん強くなって、バケツをひっくり返した様な大雨になりましたが、三男が全ての雨粒をはじいてくれたので、父親も長男も次男も、まるで屋根の下にでもいる様に濡れることがありません。
　お父さんは、これを見ると言いました。
「どうやらお前の腕前が一番だ。家はお前にやろう」
　それには、長男も次男も賛成(さんせい)しました。

　それから家は三男の物になりましたが、三人はその家で死ぬまで一緒に仲良く暮らしたそうです。

おしまい