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第133話
かわいそうなフクロウ
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むかしむかし、森に住んでいた一羽のフクロウが、えものを探しているうちに近くの小さな町にまよい込みました。
フクロウはその夜、ある家の納屋(なや)で過ごすことにしたのです。
さて夜が明けると、納屋にやってきた他の鳥たちが初めて見るフクロウの姿にビックリして、メチャクチャにさわぎ出しました。
あまりのさわぎにフクロウの方もこわくなって、納屋から出るに出られません。
やがてそのさわぎを聞きつけて、納屋の持ち主の男がやってきました。
そしてその男も、初めて見るフクロウの姿にビックリです。
「なんだ、この生き物は! 目がまん丸で大きく、首がクルクル回るとは! これはきっと、怪物にちがいない!」
そこで男は、町長のところへ相談に行きました。
「怪物が現れただと? なにをバカなことを。どれどれ、わしが見てやろう」
町長は男の納屋に行って、初めて見るフクロウの姿にビックリ。
「これはきっと、悪魔(あくま)に違いない! すぐに退治(たいじ)をしよう!」
町長は若い男たちを集めると、若者たちに言いました。
「この町に、悪魔が現れた! 退治した者には、金貨をあたえるぞ!」
その言葉に武器を持った大勢の若者が納屋に入っていきましたが、みんな初めて見るフクロウの姿にビックリして、だれもフクロウに手を出そうとはしません。
するとそこへ、町一番の力持ちが現れました。
「なんだなんだ、なさけない。このおれさまが、その悪魔をやっつけてやろう」
納屋には行った力持ちも初めて見るフクロウのきみょうな姿にビックリしましたが、勇気を出してフクロウのいる天井のはりに登っていきました。
「さあ悪魔め、このおれさまが退治してやる。かくごしろ!」
力持ちは手に武器を持ったまま、ジリジリとフクロウに近寄っていきます。
フクロウも自分が殺されようとしているのがわかったのか、羽毛(うもう)を逆立てると目をむき出して鳴き声を上げました。
「シュフー、シュフー」
その鳴き声を聞いてフクロウが毒を吹き出していると勘違いした力持ちは、なさけない悲鳴を上げるといちもくさんに逃げてしまいました。
町一番の力持ちも逃げてしまっては、もう誰もこの悪魔(フクロウ)を退治出来ません。
「いったい、どうすればいいのだ? おれたちは、このまま悪魔に食べられてしまうのか?」
町の人たちがそう言った時、町長がある提案をしました。
「では、こうしよう。この納屋を町のお金で買いとって、町の物にした上で化け物もろとも焼きはらってしまうのだ。そうすれば誰も損をしないし、悪魔を退治する事が出来る」
「そうだ、それがいい」
みんなが賛成したので、町のお金で買い取られた納屋は火をつけられて燃やされる事になりました。
こうしてかわいそうなフクロウは、フクロウを知らない町の人たちによって焼き殺されてしまったのです。
おしまい
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