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第152話

ライオンの居眠り

ライオンの居眠り
ケニアの昔話 → ケニアの情報

 むかしむかし、ある森で、森の動物たちが集会を始めました。
 この森のリーダーはライオンで、副リーダーはジャッカルです。
「今日は、『森の決まり』について相談しよう」
 リーダーのライオンがそう言いましたが、ライオンはすぐに眠そうに目を閉じると、そのままこっくり、こっくりと居眠りを始めたのです。
 すると副リーダーのジャッカルが、にやりと笑って言いました。 
「誰か、ロープを持って来い。おもしろい事をしてやろう」
「おもしろい事?! よし、任せろ」
 イタズラ好きのキツネが、さっそくなわを持って来ました。
「このロープで、どうだい?」
「いいぞ。丈夫そうな、ロープだ」
「それで、ロープをどうするんだい?」
「この居眠りライオンの尻尾を、木に結びつけるのさ」
 ジャッカルはそう言うと、ライオンの尻尾をちょんと引っ張りました。
 ライオンは、ぐっすりと眠ったままです。
「よし、ここをこう結んで、・・・なかなか難しいな」
 ジャッカルがライオンの尻尾にロープを結び付けようとしますが、なかなかうまく結べません。
「結ぶのは、おいらに任せてくれ。・・・よし。出来た!」
 キツネが器用に、ロープでライオンの尻尾を近くの木に結びつけました。
「よし、上出来だ。居眠りライオン、そろそろ起きな」
 ジャッカルがロープをぐいっと引くと、ライオンが目をこすりながらようやく起きました。
「ああ、ごめんごめん。
 うっかり眠ってしまったようだ。
 何しろゆうべは、一晩中森を見張っていたからね。
 でも大丈夫。
 眠っていても、きみたちが話し合っていた事はちゃんと聞いていたからね。
 ・・・うん?! 何だこのロープは! 誰だ、こんな悪い事をしたのは?!」
 ライオンが大声で怒鳴ると、隣にいたジャッカルが知らん顔で言いました。
「さあ? ぼくではありませんよ」
「では、サル! お前の仕業か!」
「と、とんでもありません」
「じゃあ、キリンか!」
「わたしじゃ、ありません」
「イノシシ、お前だな!」
「おれじゃ、ないですよ」
 するとキツネが、ペロリと舌を出して言いました。
「やったのは、このわたしです」
「イタズラギツネめ、食い殺してやる!」
 ライオンはキツネに飛びかかろうとしましたが、でも尻尾が木に結ばれているので、その場から動けません。
「あはははは、残念。そのロープは、そう簡単にはほどけないよ」
  キツネは、笑いながら逃げ出しました。
「待て!」
 ライオンは鋭い牙で、ロープに噛み付きました。
 ロープの噛まれた部分がだんだん細くなり、もう少しでちぎれそうです。
 するとその時、ジャッカルが言いました。
「すまん。
 このイタズラは、わたしが言い出した事なんだ。
 きみが眠ってしまったので、つい、イタズラをしてみたくなったのさ」
「・・・なるほど」
 ライオンは、頭をぽりぽりとかきながら言いました。
「確かに、集会の最中に寝てしまったわしが悪い。では気を取り直して、『森の決まり』について相談しよう」
 ライオンはそう言うと、再び集会を始めました。

おしまい

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