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第157話
二人の女中
ロシアの昔話(クルイロフ童話) → ロシアの説明
むかしむかし、とても人使いの荒い奥さんの家に、二人の女中が住み込みで働いていました。
この女中たちの仕事は糸をつむぐ事で、毎朝、まだ暗いうちから奥さんにたたき起こされて働かされていました。
なぜ、この奥さんが早起きかと言うと、実はこの家には早起きのオンドリがいて、
♪コケコッコウー!
と、目覚ましのように奥さんを起こしてしまうからです。
オンドリに起こされた奥さんはすぐに飛び起きて来て、
「さあ、今日も働くんだよ」
と、ねむっている女中たちを棒でたたき起こすのです。
おかげで女中たちは、いつも疲れ果てていました。
「ああ、一度でいいから、ゆっくりねむりたいわ」
「本当にねえ。でも、あのオンドリがいる限り無理よ」
「そうよね。あのオンドリさえいなかったら、わたしたちはもっとゆっくりねむれるのに」
「・・・そうよ、あのオンドリさえいなければ」
ある夜、二人の女中は奥さんが眠っているすきに、早起きのオンドリをネコに襲われたように見せかけて殺してしまったのです。
「さあ、これで明日からゆっくり眠れるわ」
「そうね。あのオンドリは、もういないのだから」
二人がゆっくりと眠れたのは、次の日の一日だけでした。
なぜなら目覚まし代わりのオンドリがいなくなった奥さんは、
「寝坊しては大変よ」
と、時間ばかり気にして、オンドリでさえ鳴かなかった早い時間から起き出すとねている女中たちをたたき起こして仕事を始めさせたのです。
二人の女中はオンドリを殺してしまったために、今まで以上に朝早くから働かされたのでした。
これと同じように、人は嫌な事やつらい事から逃げようとあれこれ考えます。
でもその方法を間違えると、かえってひどい目にあうのです。
おしまい
似たお話しが、イソップ童話にもあります。
→ 女主人と召使いの女たち
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