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第158話
ベッドの下の小人
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むかしむかし、チャンという名前の旅の若者が、河南省のコンシェンという村の小さな宿屋に泊まりました。
二階の部屋に荷物を運び終えたチャンが一休みしていると、宿の主人がやって来て言いました。
「お客さま。荷物をお運びいただいたばかりで申し訳ありませんが、別の部屋へお移りになりませんか?」
「それは、どういう訳で?」
「はい。家の者がうっかりこの部屋に案内してしまいましたが、実はこの部屋は夜になると怪しい物が現れるとのうわさで・・・」
すまなそうに言う主人に、チャンは笑って言いました。
「あははは。大丈夫ですよ。どんな物が出て来たって、驚きませんから」
夜になりました。
チャンが薄明かりをつけて眠っていると、ベッドの下から水の流れるような音が聞こえてきました。
「おや、何だろう?」
チャンがベッドの下をのぞくと、ベッドの下から奇妙な服を着た小さな小さな男が出てきました。
小さな男は怖い顔で、チャンをぐいと睨みつけました。
でも、十センチぐらいの男にいくら睨まれても怖くありません。
チャンが男を睨み返すと、男はぶつぶつ言いながら消えてしまいました。
(あれか、主人の言っていた怪しい物は。・・・大したことはないな)
チャンが再び眠ろうとするとまた水の流れる音がして、さっきと同じような小人が大勢現れました。
今度の小人たちの中には黒い冠をかぶった偉そうな態度の役人がいて、他の小人がかつぐこしに乗っています。
役人はチャンを見ると何やら早口で言いましたが、チャンには何と言っているのか分かりません。
やがて役人に命じられた他の小人たちが、チャンに飛びかかってきました。
(ははーん、ぼくをつかまえる気だな)
小人たちはチャンの靴にしがみついたり靴下を引っ張ったりしますが、チャンがびくともしないので今度は役人が飛びかかってきました。
役人は必死でチャンの靴を脱がそうとしますが、役人一人の力ではどうにもなりません。
チャンは、役人をつまみあげました。
「しつこいな。ちゃっとこらしめてやるか」
役人はチャンにつまみあげられるとバタバタと暴れましたが、やがてあきらめておとなしくなりました。
すると他の小人たちが目に涙をためて、チャンに頭を下げながら口々に訴えました。
やはり小人たちが何を言っているかさっぱり分かりませんが、どうやら『ご主人を、お助けください』と言っている様子です。
チャンはニヤリと笑うと、小人たちに言いました。
「いいだろう。お前たちの主人は返してやろう。だがその代わり、わたしに贈り物をするのだぞ」
するとチャンの言葉が分かったのか、小人たちは頭を下げてどこかへ消えると、やがて「かんざし」や「くし」や「髪飾り」などをたくさん運んできました。
なぜ女の人が使う道具ばかりなのかは分かりませんが、どれもなかなか高価そうな品物です。
「よし、主人は返してやろう」
チャンが役人を下ろすと小人たちはあわてて役人をこしに乗せて、そのままベットの下へ逃げてしまいました。
それからしばらくして、宿の主人の怒鳴り声がしました。
「誰か来てくれ! 妻の部屋に泥棒が入った。髪飾りを盗まれてしまった!」
小人たちが持ってきた品物は、宿の主人の奥さんから盗んだ物だったのです。
おしまい
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