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第176話
一番おいしい血
バルト諸国の昔話
むかしむかし、神さまが地上の動物たちをもう一度作り直そうと、世界中を飲み込む大洪水を起こしました。
その時、ノアという老人が大きな大きな箱船を作り、多くの動物たちを助けようとしたのです。
でもその時、箱船には小さな穴が一つ開いていました。
「このままでは穴から水が入ってきて、船が沈んでしまうぞ」
「外に出て修理をするわけにもいかないし、どうすればいいのだ?」
みんなが困っていると、ヘビが言いました。
「もし、ぼくたちみんなが無事に助かって、その後で一番おいしい血を持った肉をぼくが食べてもいいのなら、ぼくの体で穴をふさいであげますよ」
「わかった。一番おいしい血を持った肉を食べていいから、とにかく穴をふさいでくれ」
「約束だよ」
こうして箱船はヘビのおかげで沈む事なく、何日も続いた大洪水を乗り切ったのです。
助かったみんなはヘビとの約束を守るために、誰の血が一番おいしいかを話し合いました。
でも、誰の血が一番おいしいかなんてわかりません。
その時、いつも動物の血を吸っている蚊が言いました。
「それでは、わたしがみなさんの血を少しずつ吸って、誰の血が一番おいしいのか調べましょう」
みんなが賛成したので、蚊はみんなの血を少しずつ吸い始めました。
血を持つ生き物はたくさんいたので調べるのに何日もかかりましたが、ようやく全ての血を吸い終えた蚊にツバメが尋ねました。
「蚊さん、ごくろうさま。ところで、誰の血が一番おいしかったですか? もしかして、わたしですか?」
「いいえ、ツバメさん。一番おいしい血を持っているのは、人間でしたよ」
「えっ? 人間?」
ツバメは、びっくりしました。
なぜならツバメと人間は大の仲良しで、ツバメはいつも人間の家の軒先に巣を作らせてもらっているからです。
(人間がヘビに食べられたら、わたしたちの家を作る場所がなくなってしまうわ)
そこでツバメは蚊が本当の事を話せない様に、くちばしで蚊のあごをつついて、半分にしてしまったのです。
その為に蚊は、「ブーン、プーン」としか言えません。
「蚊は、何て言っているのだろう?」
みんなが困っていると、さっきのツバメ飛んで来て言いました。
「蚊はね、カエルの血が一番おいしかったと言っていますよ」
「そうか。ではヘビに食べられるのは、帰るに決定だ」
こうしてヘビは、カエルを襲って食べるようになったのです。
でもカエルの血と肉は、ヘビが思っていたほど美味しくはありません。
やがてツバメのうそに気づいたヘビは、怒ってツバメに襲いかかりました。
でもツバメは素早く逃げたので、尻尾のまん中を破かれただけですんだという事です。
おしまい
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