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第177話
海に落ちたキツネ
ロシアの昔話 → ロシアの情報
むかしむかし、ロシアのある川岸でキツネが昼寝をしていると、川上から一本の丸太が流れてきました。
その丸太には、二羽のカモメがとまっています。
「おーい、カモメくん! そこで何をしてるんだい?」
キツネが聞くと、カモメが答えました。
「やあ、キツネさん。魚取りだよ」
「へえ、魚か。なら、おいらも仲間に入れておくれよ」
「いいよ。ここへ来なよ」
そこでキツネが丸太の上にピョンと飛び乗ると、丸い丸太がくるんと回ってキツネは川の中へ落ちてしまいました。
そして丸太に乗っていた二羽のカモメは、どこかへ飛んで行きました。
「まいったな、案内がいなくなった。とにかく、一度岸に戻らないと」
何とか丸太によじ登ったキツネは、自分の足と尻尾に魔法をかけました。
「足よ、かいになれ! 尻尾よ、かじになれ!」
するとキツネの足がかいの様に水をかいて、尻尾がかじの様に向きを変えて、キツネを乗せた丸太はボートの様にぐんぐんと水を進んだのです。
ところが尻尾に行く先を言わなかったので、キツネを乗せた丸太は岸に近づくどころか、ますます沖へと行ってしまいました。
気がつくと周りは水ばかりで、どの方角へ行ったら良いのかわかりません。
「どうしよう? 岸はどっちだろう?」
キツネが困っていると、目の前にアザラシが顔を出して言いました。
「キツネさん。こんなところで何しているんだい? もしかして道に迷ったのかい?」
道に迷ったと正直に言えば、アザラシにバカにされるかもしれません。
そこでキツネは、こう答えました。
「とんでもない。
実は、海のけものがまだ生き残っているかどうか、見に来たんだ。
お前たち海のけものは、すっかり数が少なくなったとのうわさだからな」
「そんな事はない。
おれたち海のけものは、たくさんいるよ。
アザラシにクジラに、セイウチだって」
「本当かな? 信じられないよ」
「本当だって。嘘じゃないよ」
「それじゃあ、お前たち海のけものをここに集めなよ。 おいらが数を数えてやるから」
「いいよ。ちょっと、待ってて」
アザラシは海の底へ潜っていくと、海の仲間たちを呼び集めました。
「おーい! 海のけものたちよ! みんな集まれー!」
するとあちこちから、アザラシやクジラやセイウチたちが集まってきます。
アザラシが、みんなに言いました。
「さあ、みんな。
今から岸に向かって、一列に並んでおくれ。
おれたち海のけもの数を、数えてもらうんだから」
こうして海に、海のけものたちの長い長い橋がかかりました。
(よし、うまくいったぞ)
キツネは待ってましたとばかりに、先頭のアザラシの背中に飛び乗りました。
「よし、今から数えるぞ! アザラシが、一頭、二頭、三頭・・・。クジラが、一頭、二頭、三頭・・・。セイウチが、一頭、二頭、三頭・・・」
キツネは数を数えながら海のけものたちの橋を渡って、まんまと岸に飛び移ったのです。
おしまい
日本にも、似たお話しがあります。
→ いなばの白うさぎ
おしまい
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