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第182話

スズメの仕返し

スズメの仕返し
ジャータカ物語ジャータカ物語について

 むかしむかし、インドのある森で、お腹を空かせたライオンがゾウを殺して食べていました。
「ああ、うまい。今日のゾウは特にうまい」
 しかし夢中で食べているうちに骨がのどに引っかかって、ライオンは息がつまりそうになりました。
「くっ、苦しい。このままでは、死んでしまう」
 苦しむライオンがふと見ると、木の上に一匹のスズメがとまっていました。
 ちっぽけなスズメなどいつもは気にもしないのですが、ライオンはスズメに苦しそうな声でお願いをしました。
「スズメ君。
 すまないが、おれののどに引っかかった骨を取っておくれ。
 そのかわり、今度えものを取ったらり分けてやるから」
「ええ、いいですとも。
 骨を取ってあげますから、口を大きく開けて下さい。
 でも、えものを分けてくれる約束を守ってくださいよ」
「大丈夫。約束は必ず守るから」
 ライオンが大きな口を開けると、スズメはライオンの口の中へ入って引っかかった骨を取ってやりました。
 おかげでライオンは、何とか命が助かりました。

 それから数日後、あの時のスズメはライオンがえものを食べているのを見つけました。
「よし、約束のえものを分けてもらおう」
 スズメはライオンのところへ行くと言いました。
「ライオンさん。約束ですから、わたしにもごちそうを分けてくださいよ」
 するとライオンは、恐ろしい顔でスズメをにらみつけました。
「なんだと?
 ちっぽけで虫けらの様なお前が、動物の王であるおれさまのえものを寄こせだと?
  いいか、たとえゾウの様に大きな奴でも、おれに殺されて食べられてしまうのだ。
 それなのにお前は、なまいきにもおれさまの口の中へ入ったのに、食べられずにすんだじゃないか。
 それだけでも、ありがたいと思え」
 このライオンの態度に、スズメは腹を立てて言い返しました。
「何が動物の王よ。
 わたしは確かに、虫けらの様にちっぽけな鳥だけど、あなたなんてちっとも怖くはないわ。
 あなたが約束を守らないのなら、あなたに仕返しをしますからね」
「あははは。虫けらが仕返しだと?
 いいだろう。
 どんな仕返しをするかは知らんが、せいぜい頑張るんだな」

 それからしばらくたったある日、えものをお腹いっぱい食べたライオンが、木かげで昼寝をしていました。
 その様子を見つけたスズメは、静かにライオンのひたいの上にとまると、
「これが仕返しよ!」
と、くちばしで思いきりライオンの目をつついたのです。
「うぎゃーーー!」
 片目をつぶされたライオンが飛び上がると、ライオンの片目をつぶしたスズメが近くの木の枝にとまってあかんべーをしていました。
「スズメめ、なんてひどい事をするんだ!」
 ライオンは残った片目で、スズメをにらみつけました。
 するとスズメは、すました顔でライオンに言いました。
「動物の王さまなどと威張りながら、わたしに命を助けられた事を感謝もしないで、わたしを馬鹿にしたからそんな目にあうのだわ。
 でもね、両方の目をつぶすことが出来たのに片目を助けてあげたのだから、ありがたいと思いなさい」
 スズメはそう言うと、さっと飛んで行きました。

 このお話しは、たとえ相手がちっぽけな存在でも、約束を守らないとひどいしっぺ返しを食らうと言う事を教えています。

おしまい

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