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第190話
毒ガキと毒ナシ
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むかしむかし、あるお寺の和尚さんが、美味しそうなカキをもらってきました。
「おお、こりゃあ、うまいカキじゃ。こんなにうまいカキを、他の人間に分けてやるのはもったいないな。・・・そうだ、戸棚に隠しておいて、一人でこっそりと食べるとしよう」
ある日の事、和尚さんが隠していたカキを出して食べていると、突然小坊主が部屋に入って来ました。
「和尚さま、新しいロウソクはどこですか? ・・・あれ、和尚さま、一体何を食べているのですか?」
カキを見られた和尚さんは、慌てて答えました。
「ええと、これはその、これは毒ガキと言って、大人が食べると胃の薬じゃが、子どもが食べるとたちまち死んでしまう、おそろしい食べ物なんじゃ。だから決して、お前は食べてはならんぞ」
「はい、わかりました」
さて、それから数日後、和尚さんは用事で出かけてしまいました。
すると一人残った小坊主は、さっそく戸棚を開けてカキを取り出すと、パクリと一口食べてみました。
「わあ、甘くておいしい! やっぱり普通のカキだ」
小坊主は、あまりのおいしさに、隠してあったカキを一つ残らず食べてしまったのです。
それから小坊主は、和尚さんが大切にしているすずりを持って庭に出ると、
バン!
と、石に投げつけて割ってしまいました。
「うん、これでよし」
次に小坊主は、ふとんにもぐって寝たふりを始めます。
やがて和尚さんが、お土産にもらったナシを山のようにかかえて帰ってきました。
(しめしめ、今日はナシをもらったぞ。今度はこのナシを『毒ナシ』という事にしよう)
そして、ふとんにもぐって寝ている小坊主を見てびっくり。
「おや? 昼間から寝たりして、どうしたのじゃ? ・・・具合でも悪いのか?」
和尚さんが心配して尋ねると、小坊主は弱々しい声で答えました。
「和尚さま、ごめんなさい。実は、和尚さまの大事なすずりを割ってしまいました。そこで、死んでお詫びをしようと、あのおそろしい『毒ガキ』を、全部食べて、死ぬのを待っているところです」
「「・・・・・・」
これには和尚さん、開いた口がふさがりません。
(なんじゃい、『毒ガキ』がうそだとばれておったか。この上、ナシを『毒ナシ』と言ったら、次は何を壊されるかわかったものじゃない)
和尚さんは、すずりを割った事を許してやると、もらってきたナシを小坊主と半分ずつ分けたそうです。
おしまい
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