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第192話
ペルセウスのゴルゴーン退治
ギリシア神話 → ギリシアの情報
むかしむかし、ギリシアの南の島に、ダナエーという美しい女の人がペルセウスという小さな男の子を連れてやって来ました。
やがてペルセウスは、立派な若者に成長しました。
ある年の事、悪王との評判の悪い王さまが美しいダナエーを見て、結婚したいと思いました。
しかしダナエーには、いつもペルセウスがついているため、王さまはダナエーに近づく事が出来ません。
そこで王さまは、
「ペルセウスさえいなければ、美しいダナエーをわたしの物に出来るのだ。よし、あいつをどこか遠い所へ追いやってしまおう」
と、考えて、多くの人々をお城へ集めると、こう言いました。
「皆の者! わたしは近い内に結婚をする。みんなは何を、お祝いにくれるかね? ペルセウス、お前はどうだ? いや、お前などに、大した物を持ってこられるはずがないか」
王さまの、馬鹿にしたような言い方に腹を立てたペルセウスは、
「王さまがお望みなら、ゴルゴーンの首でも差し上げましょう」
と、言ってしまいました。
ゴルゴーンと言うのは、世界の西の果てに住んでいる言われる、髪の毛がヘビで出来た恐ろしい女の怪物です。
そしてゴルゴーンの顔見たものは、誰でも石になってしまとのうわさです。
そんな怪物の首を、取ってこられるはずがありません。
でも、ペルセウスの言葉を聞いた王さまは、ニヤリと笑うと、
「ペルセウスよ、よくぞ言った! ではすぐにゴルゴーンの首を取ってくるのだ」
と、ペルセウスに命令しました。
「・・・はい、かしこまりました」
ペルセウスは返事をしたものの、すっかり困り果ててしまいました。
(しまった。ゴルゴーンの首など、どうやって取ってくればよいのだ)
王さまの城を出たペルセウスが、とぼとぼと歩いていると、突然ペルセウスを呼ぶ声がしました。
「ペルセウス、ペルセウス」
ペルセウスが声の方を見ると、光の中に美しい若者が立っていました。
「わたしは、神さまの使いのヘルメース。お前がゴルゴーンの首を取る助けをしてやろう。ただし、どんな苦しい事でも、我慢出来るかね?」
「はい。どんな事でも我慢いたします」
「よし、ついてくるがいい」
そう言うと、ヘルメースはペルセウスの手を取って、空に飛び上がりました。
ぺルセウスはヘルメースとともに、西へ西へと空を飛んで行きました。
そして、ようやく人間が一人もいない、荒れ果てた世界の西の果てにたどり着きました。
「ペルセウスよ。まずは、わたしのカマを持ちなさい。そして、あの洞穴の先のニンフの所へ行って、三つの魔法の品を借りるのだ。それら身につけて、ゴルゴーン退治に行がよい」
ヘルメースはそう言うと、消えてしまいました。
そこでペルセウスは、ニンフから三つの魔法の品を借りました。
まず一つ目は、足にはくと空を自由に飛べる、翼のあるサンダル。
二つ目は、頭にかぶると姿の見えなくなる、姿隠しの帽子。
三つ目は、口を閉じれば決して物が落ちない魔法の袋です。
ペルセウスは、さっそくサンダルをはいて帽子をかぶり、左手に魔法の袋、右手にはヘルメースに借りたカマを持って、さらに西を目指して飛んで行きました。
そしてついに、ゴルゴーンの住みかにやって来ました。
中にはいると、ゴルゴーンはどうやら眠っているらしく、ゴーゴーと、いびきが聞こえてきます。
でも、いくら眠っていても、ゴルゴーンの顔を見たものは石になってしまうのです。
「顔を見ないで首を切り落とすには、どうすればよいのだろう?」
ペルセウスが考えていると、空から美しい女の人が舞い降りてきました。
「わたしは、戦いと知恵の女神のアテナです。あなたの話を聞いて助けにきました。さあ、この青銅の盾を使いなさい。この盾にゴルゴーンの姿を写して、首を切り落とすのです」
アテネはそう言って、ピカピカに磨かれた盾を差し出しました。
「アテネさま、ありがとうございます」
ペルセウスは盾を受け取ると、ゴルゴーンの側に近づきました。
そして、盾に写ったゴルゴーンを見ながら、その首を、
「えいっ!」
と、カマで切り落としたのです。
「さあ、早く逃げるのです!」
アテネに言われて、ペルセウスは切り落としたゴルゴーンの首を魔法の袋に入れると、ふわりと空に飛びあがりました。
やがてゴルゴーンの仲間たちが逃げるペルセウスを追いかけましたが、ペルセウスは姿の消える魔法の帽子をかぶっているので、誰もペルセウスを見つける事が出来ません。
やがてペルセウスは、母親のダナエーが待っている島へと急ぎました。
島では、あの王さまがペルセウスがいない事をよい事に、ダナエーと無理矢理結婚しようとしていました。
今日は、その前祝いの日です。
王さまは仲間を集めて、浮かれていました。
するとそこへ、ペルセウスが現れて、
「王さま。ただいま戻ってきました。さあ、これがお約束の品です」
と、袋からからおもむろに、ゴルゴーンの首を出しました。
すると王さまと仲間たちは、突然の出来事に、うっかりゴルゴーンの顔を見てしまったのです。
そしてみんなは、あっという間に、みんな石になってしまいました。
こうして悪い王さまとその仲間たちがいなくなり、島には平和な日々が訪れたという事です。
おしまい
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