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第198話
小さくなった足
中国の昔話 → 中国の情報
むかしむかし、中国のある村に、とても可愛いお百姓の娘がいました。
この娘には、一つだけ悩みがあります。
それは、足が大きいという事です。
「こんな大きな足では、結婚しても、だんなさんにきらわれてしまうわ」
そう思うと、娘は悲しくなるのでした。
むかしの中国では、足が小さいほど美人だといわれていました。
だから女の子たちは、足が大きくならないようにと、てんそくをさせられていたのです。
てんそくとは、足に固い布をきつく巻き付けて、足を大きくならないようにしておく事です。
娘は、両親に言います。
「お父さんやお母さんは、どうしてわたしに、てんそくをしてくれなかったの?」
すると両親は、
「小さな足では、働く事などできない。百姓の娘は、大きな足でいいのだ」
と、言うばかりです。
やがて娘は結婚して、山のふもとに住んでいる男のおかみさんになりました。
ところが男はすぐに、自分のおかみさんの足が大きい事に気がつきました。
「何と、お前は、こんなにも大足だったのか。何てみっともないんだ」
それからは夫は、毎日の様におかみさんの足の悪口を言い始め、ついにおかみさんを家から追い出してしまったのです。
追い出されたおかみさんは、山のふもとに座り込むと、しくしく泣き出しました。
「貧乏なお父さんやお母さんのところへ帰ったって、嫌がられるだけだわ」
さて、いつまで泣いていたのでしょう。
突然、おかみさんに誰かが声をかけました。
「お前さん、なぜこんなところで泣いているのだね?」
見ると、てんびん棒で薬箱をかついだおじいさんが立っていました。
おかみさんは、泣きながら今までの事を話しました。
「おやおや、足が大きいと言うだけで可愛そうに。それでは、わたしが助けてやろう」
おじいさんはそう言うと、箱から薬を取り出して、おかみさんに手渡しました。
「お湯にこれを入れて、そのお湯で足を洗ってごらん。きっと、足が小さくなるだろう。ただし、効き目が強すぎるから足をお湯につける時間は、ほんの少しだけだよ。決して長くつけてはいけないよ」
おかみさんがお礼を言おうと思ったとたん、おじいさんの姿は消えていました。
「不思議なおじいさんだったわ。とにかく、言われた通りにしてみましょう」
おかみさんは家に帰ると、薬を入れたお湯で足を洗ってみました。
すると見る間に、足が小さくなっていくのです。
「まあ、本当に足が小さくなったわ!」
おかみさんは喜んで、小さくなった足を夫に見せました。
夫も、おかみさんの足が小さくなったので大喜びです。
それからしばらくたったある日、夫は小さくなったおかみさんの足を見て、こう思いました。
「おれの頭は人より大きいから、少し小さくなったら格好いいかもな」
そこで夫は、おかみさんが足を洗ったお湯に頭をつけてみました。
すると、何ともいえない、いい気持ちです。
それでつい、夫はお湯に長く頭をつけていました。
「さあ、どうかな?」
しばらくしてお湯から頭を出した夫は、自分の頭をさわってみてびっくりです。
何と夫の頭は、がニワトリのタマゴぐらいに小さくなっていたのです。
おしまい
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