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第209話
石でお月さまを追い返す
スリランカの昔話 → スリランカの情報
むかしむかし、セイロン島(→スリランカ)で、果物や穀物の取り入れを祝ったおまつりをしていました。
島の人たちが草の上に座って、お酒を飲んだり、ごちそうを食べたりと、楽しい時をのんびりと過ごしていると、夜がふけるにつれて空高く登った月が、だんだんだんだん、西の方に傾いて来ました。
一人の男が、ふと空を見上げて、びっくりした様に叫びました。
「みんな空を見てごらんよ。さっきまで頭の上で光っていた月が、あんなところまで降りて来ているぞ!」
この言葉に、村人たちは口々に騒ぎ始めました。
「本当だ。このままだと月は、ここまで降りて来るかもしれないぞ」
「そりゃ大変だ! おれたちの大事な穀物や果物が、月の光で燃えてしまうよ」
「困ったなあ。どうすればいいんだ?」
「そうだ、急いで刈り取りをしよう」
「いやいや、今からではとても間にあわないよ」
「では、どうすればいいんだ?」
島の人たちが大騒ぎをしていると、今まで黙って聞いていた村長が、立ち上がって言いました。
「みんな落ち着きなさい。わしに、いい考えがある。みんなで月を、追い払ってしまえばいいんだよ」
「追い払うって、どうやって追い払えばいいのかね」
「石を投げつけるのさ。みんなで石を投げつければ、さすがの月も逃げ出すに決まっている。さあ、みんなで石を拾い集めるんだ」
そこで島の人たちは夢中になって石を拾い集めると、月に向かって一斉に投げ始めました。
「それっ、どこかへ行ってしまえ」
「どうだ、これでもか!」
けれど、みんながどんなに石を投げつけても、月は逃げる様子がありません。
村長が、大きな声で言いました。
「さあ、みんな、もっとがんばろう! 大事な穀物や果物を、しっかりと守るんだ!」
そこでみんなはあきらめず、石を投げて投げて、投げ続けました。
するとそのうちに東の空が明るくなって太陽が登り始めると、月はようやく沈んで消えました。
「やったー! 月を追い払ったぞ!」
「おれたちの穀物や果物を守ったぞ!」
島の人たちは大喜びすると、今度は月を追い払ったおまつりをしたそうです。
おしまい
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