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第210話

ライオンをだました犬の夫婦

ライオンをだました犬の夫婦
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 むかしむかし、ジャングルに、ニーパーというオス犬と、ニーマというメス犬がいました。
 二匹はとても仲良しで、一緒に楽しく暮らしていました。
 でも嫌な事に、近くにピュートケという意地悪な犬が住んでいるのです。
 ピュートケは、二匹のところに来ては食べ物を盗んだり、家を汚したり、その上、もうすぐ赤ちゃんが生まれるニーマの為にニーパーが食べ物を探していると、その邪魔をしたりするのです。
「ああ、ピュートケのいない平和な所で、赤ちゃんを産みたいわ」
「そうだね。では、よそへ引っ越そう」
 こうしてニーパーとニーマは、ジャングルの中を歩いて行きました。
 しばらく行くと、ニーマは急に赤ちゃんが生まれそうな気がしたので、ニーパーにその事を言いました。
「それは大変だ! 急いで産む場所を探さないと」
 するとちょうど良い洞穴があったので、二匹はあわててそこに入りました。
 でもそこは、ライオンの巣穴だったのです。
「しまった。ここはライオンの家だ! でも、もう間に合わない」
 しばらくすると、可愛い赤ちゃんが生まれました。
「何とか無事に生れたわ。可愛い男の子よ。でも、ライオンが帰ってきたらどうしましょう?」
 ニーパーは懸命に考えて、良い事を思いつきました。
 しばらくしてライオンが帰って来るのが見えると、ニーパーの合図で、ニーマは赤ちゃん足にカプリと優しくかみつきました。
 そして、
「キヤーン! キャーン!」
と、びっくりした赤ちゃんが泣くと、ニーパーはわざとライオンに聞こえるような大声で言いました。
「どうして、そんなに赤ん坊が泣いているんだい?」
 するとニーマも、大声で答えました。
「あら、決まってますわ。この子はきっと、ライオンの肉が食べたいんですよ」
「でも、ライオンは昨日捕まえたばかりだから、まだ残っているだろう?」
「あれは、古くなりましたからね。赤ん坊には、新鮮なライオンの肉を与えないと」
 さて、この二匹の会話を聞いていたライオンはびっくりです。
(なっ、なんだ? ライオンの肉を食べるだと? これは大変だ! 見つかったら食べられてしまうぞ!)
 そこでライオンは、大急ぎで逃げ出しました。
 そして夢中で走って行くと、意地悪な犬のピュートケに出会いました。
「おや? ライオンさん。なにをそんなに慌てているのですか?」
「ああ、実は・・・」
 ライオンは、さっき自分の家で聞いた、恐ろして会話をピュートケに話しました。
 するとピュートケには、すぐに事情がわかって、
(ははーん。それはきっと、ニーパーとニーマだな。それなら、二匹を困らせてやろう)
と、考えると、ライオンに言いました。
「ライオンさん。そんな奴ら、ちっとも怖くはありませんよ。それより自分の家を取り返しましょう」
「しかし・・・」
 ライオンは怖くて仕方がないので、なかなか戻ろうとはしません。
「それでは、わたしの尻尾とライオンさんの尻尾を、つないで行きましょう。それなら怖くないでしょう」
 ピュートケの言葉にライオンもやっとうなずいて、二匹は尻尾と尻尾をつないで巣穴に戻る事にしました。
 巣穴の外では、ニーパーが見張りをしていました。
 そしてライオンとピュートケがやってくるのを見ると、ピュートケに大声で叫びました。
「おーい、ピュートケ。約束通り、ライオンを連れて来たか? 昨日のよりおいしいライオンだといいなあ」
 それを聞いたライオンはピュートケにだまされたと思い、食べられては大変と大慌てで逃げ出しました。
 でも、ライオンとピュートケは尻尾と尻尾がつながっているので、うまく走れません。
 二匹は何度も何度も木にぶつかって、最後には死んでしまいました。

 こうして意地悪なピュートケも、怖いライオンも退治したニーパーとニーマは、赤ちゃんと一緒に幸せに暮らす事が出来ました。

おしまい

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