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第217話
ひねくれ者のエイトジョン
アメリカの昔話 → アメリカの情報
むかし、エイトジョンという名前の男の子がいました。
このエイトジョンはとてもひねくれ者で、お母さんが何かを注意するとおもしろがって、その反対の事ばかりするのです。
ある日、エイトジョンがヒキガエルを踏み潰して遊んでいたので、お母さんが注意をしました。
「ヒキガエルを踏み潰してはいけません。ヒキガエルを殺すと悪い事が起こります」
「うん分かった。もう踏みつけないよ」
ところがエイトジョンは、お母さんがどこかへ行くと何匹も何匹もヒキガエルを踏み潰しました。
「悪い事って、どんな事だろう。何が起こるか楽しみだな」
エイトジョンが家に帰ると、飼っていた牛のお乳が急に出なくなったと、お母さんが困っていました。
次の日、お母さんがエイトジョンに言いました。
「椅子に腰掛ける時、後ろ向きに座ってはいけません。後ろ向きに座ると悪い事が起こります」
「うん分かった。後ろ向きには座らないよ」
ところがエイトジョンは、お母さんのいないところでは後ろ向きに腰掛ける様になりました。
「次は、どんな悪い事が起こるんだろ?」
すると翌日、バターを作る機械が壊れてしまいました。
ある土曜日、お母さんはエイトジョンに言いました。
「日曜日は、木登りをしてはいけません。悪い事が起こるから」
「うん分かった。明日は木登りをしないよ」
でもエイトジョンは、日曜日に木登りをしました。
すると家で飼っているロバが、足の骨を折りました。
お母さんが子供の頃は、歯の数を数えてはいけないと言うと、エイトジョンはそれから毎日歯の数を数えます。
すると赤ちゃんが病気になり、みんなは大慌てです。
でもエイトジョンはみんなが困るのが楽しくて、お母さんがしてはいけないと言うことを止めようとはしません。
「頭を下にして寝てはいけません。家のお金がなくなってしまいます」
エイトジョンは、その日から頭を下にして寝るようになりました。
すると家がどんどん貧乏になり、その日の食べ物を買うのも困る様になりました。
「日曜日に、うめき声を出してはいけません。魔法使いがやって来て、悪い魔法をかけられてしまうから」
(へー、魔法使いが来るのか。魔法使いの魔法って、どんな魔法だろう?)
エイトジョンはお母さんの言いつけを守らず、日曜日になると朝からうめき声を出し続けました。
するとエイトジョンの目の前に、しわくちゃな顔をした魔法使いのおばあさんが現れたのです。
魔法使いは、エイトジョンに言いました。
「おやおや、日曜日にうめき声を出してはいけないと、お母さんに言われなかったのかい?」
「うん、言われたよ。悪い魔法をかけられるって。だからわざと、うめき声を出したんだよ」
エイトジョンが答えると、魔法使いはシワシワな指でエイトションの頭をなでました。
「そうかい、そうかい。ならのぞみ通り、悪い魔法をかけてあげよう」
次の瞬間、エイトジョンは魔法使いの魔法で台所のテーブルの油のシミに変えられてしまったのです。
やがてお母さんが台所にやって来て、テーブルの油のシミに気づきました。
「あら、誰かしら? こんなところに油をこぼしたのは」
お母さんはそう言うと、雑巾で油のシミをゴシゴシと拭き取ってしまいました。
エイトジョンはそれっきり、姿を見せることはありませんでした。
おしまい
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