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福娘童話集 > 絵本紙芝居(アニメかみしばい) 屋敷を救ったカエル(麻布のがま池伝説)

屋敷を救ったカエル(麻布のがま池伝説)
アニメサイズ Max 1280×720

※このアニメーションは、デジタルハリウッド大学の陣野直也さんの2013年度卒業制作作品です。

屋敷を救ったカエル(麻布のがま池伝説)
東京都の民話

通常版 (福娘童話集版)

N「むかし、むかし」N「文政(1813〜1830)の頃のお話です。」
N「江戸の町(現在の東京)では」
N「『火事が名物』といわれるほど」
N「いつもあちこちで火事が起こっていました。」
N「ある夏に起きた火事は、強風に煽られ」
N「120をこえる町が焼けてしまったのですが、」
N「この大火事でも無事だった家がありました。」
N「それは麻布にある山崎というお侍の屋敷で、」
N「まわりの家々が全て焼けてしまったのに」
N「何故かこの屋敷だけは、N「どこも焼けずにすみました。」
N「麻布のガマ池伝説」
N「この屋敷の庭には大きな池があり、」
N「沢山のカエルが住んでいました。」
N「ある夜、家来が庭の見回りをしていた時のことです。」c8
家来「うっ」
家来「おしっこがしたくなってきた。」
家来「よし、誰も見てないからあの木の陰でしちゃえ。」
家来「うわっ!」
家来「なんだガマか。」
家来「驚いて少しちびっちゃったじゃないか。」
家来「この野郎、こうしてやる。」
N「そういうと」
N「家来は子ガエルを石で囲って」
N「閉じ込めてしましました。」
カエル妻「あなた、あなた、大変よ。」
カエル夫「どうした。」
カエル妻「子どもが見当たらないの。」
カエル夫「なに!?まだ帰ってないのか。」
カエル妻「あの子に何かあったらどうしましょう。」
カエル夫「悪い人間に見つかってないといいが。」
カエル夫「長老に相談してみよう。」
N「この池にはひときわ大きな大きな」
N「年老いたガマが住んでいて、」
N「皆から何か困りごとがあるとよく相談をうけていました。」
カエル夫「長老、大変です。」
カエル長老「おお、そんなに慌ててどうした。」
カエル夫「息子がまだ帰ってないんです。」
カエル長老「なに?またか」
N「実はこの池で行方不明者がでるのは、」
N「これで4匹目でした。」
カエル夫「長老!これは人間の仕業に違いありません。」
カエル夫「何か仕返ししてやらないと気が済みません。」
カエル長老「確かにこのまま放っておくわけにはいかない。」
カエル長老「早急に対策を考えないとならないな。」
カエル長老「しかし、やみくもに報復すればいいというものでもない」
カエル夫「なに悠長なことを言ってるんですか」
カエル夫「もう我慢なりません。」
カエル長老「こら、待ちなさい」
カエル夫「お前に頼みがある」
カエル夫「こういうわけだ。」カエル夫「協力してくれるか。」
カエル1「もちろんさ。」
N「親友に協力を仰ぎました。」
カエル夫「俺たちの恨み、思い知れ!」
家来「なんだこれは!」
カエル1「まずい、逃げるぞ!」
家来「お前らの仕業か!待て!」
家来「へへへ、捕まえたぞ。」
カエル1「うわっ離せ」
家来「家中をこんなに水浸しにしやがって。」家来「山崎様に報告してやる。」
家来「山崎様!」
山崎「なんだ、騒騒しい。」
家来「屋敷中を水浸しにした奴がいます。」
家来「ですが私が犯人を捕らえました。」
家来「こいつらです。」
山崎「カエルだと?私たちにカエルが何の恨みがあるというのだ。」
山崎「理由はどうであれ許せん!」山崎「明日にでもこの屋敷のカエルを皆殺しにしろ!」
家来「わかりました。すぐに皆に知らせて参ります。」
家来「それでこの二匹はどうしましょう。」
山崎「どうせあと一日の命だ、お前に任せる。」
家来「はあ」(Yes sir)
家来「まさか山崎様があんなに怒るとは思わなかった。」
家来「もしかしてお前たち、子ガエルの復讐でこんなことやったのか?」
家来「あれは俺の仕業なんだ。すまなかったな。」
家来「しかし皆殺しは気の毒だが、俺は山崎様には逆らえない。」
カエル1「こりゃまずいことになったぞ!早く皆に知らせなくては!」
N「さあ、ガマ池の中は大変な騒ぎ」
N「長老を囲んで、若いカエルから年老いたカエルまで」N「あれやこれやと口々に意見を出し合っています。」
若いカエル「これは俺達と人間の最終戦争だ!」
若いカエル「皆立ち上がれ!」
年老いたカエル「馬鹿なことを言うな。人間相手に勝ち目なんて無い。」
若いカエル「じゃあ座して死を待てって言うのか?老いぼれ」
年老いたカエル「そうは言っていない。」
若いカエル「無残に死のうと俺は戦うぞ。」
年老いたカエル「どちらにせよ待ってるのは絶滅だぞ。」
若いカエル「じゃあどうしろっていうんだ。」
カエル妻「長老!なにか言ってください。」
長老「戦っても人間には敵わない、この大勢で移住できる場所もない。」
長老「こどもたちはまだ囚われたまま。」
長老「そしてこんな事態になったのも全て私の責任だ。」
長老「私が決着をつけよう。」
年老いたカエル「一体どうするおつもりですか?」
長老「心配はいらない。」
長老「今夜、1人で屋敷に行く。皆はここで待っていなさい」
カエル夫「長老……」
N「長老にはなにやら一計があるようでしたが」
N「がま池のカエルたちはどうすることもできず」
N「ただその時を待つしかありませんでした。」
N「あっという間に時間は過ぎ」
N「その日の晩。」
長老「山崎よ。山崎よ。」
山崎「誰だ。」
長老「ガマ池の長だ。」
山崎「なんだカエルか。」
山崎「謝りにきたって明日の計画は中止しないぞ。」
長老「我々がお前の屋敷を水浸しにしたのは、」
長老「ここの家来が、何も悪さをしていないカエルの子を閉じ込め、」
長老「多くの親が悲しんでいたからだ。」
長老「我々カエルとて、子を思う気持ちは人間と変わらぬ。」
長老「子どもをうばわれた親たちが、仕返しをしたまでだ。」
長老「しかしこの事で、お前は明日カエル狩りをするそうだな。」
長老「もし子どもたちを解放し我々の命を救ってくれるのなら、」
長老「火事の時は我々カエルが力を合わせて、この屋敷を守ってやろうぞ。」
N「そういって長老はその場を後にしました。」
N「翌朝、山崎が家来にそのことを確認すると、」
N「家来はそれを認め、カエル狩りは中止されることになりました。」
若いカエル「長老!どうなったんですか!」
長老「心配はいらない、と言っただろう。」
子ガエル「お父さん!お母さん!」
カエル妻「あの子たちが帰ってきたわ!」
カエル妻「怪我はしてない?」
子ガエル「うん!」
カエル夫「良かった。本当に良かった。」
N「それからしばらくして、あの大火事がおこったのです。」
N「屋敷はちょうど風下なので、炎から逃れる方法がありません。」
N「炎は辺りの家々を包み込んで、」
N「山崎の屋敷が燃え上がるのも時間の問題でした。」
N「そのときです。」
N「池の中から何十、何百というガマが現れました。」
N「お腹がぱんぱんに膨れるまで水を吸いこんで、」(ぱんぱん:物が膨らんで張った様子)
N「屋敷に向かっていっせいに水を吹きつけたのです。」
N「ガマたちは何度も何度も池の水を吸い、」
N「繰返し繰返し、屋敷に向かって水を吹きつけました。」
N「すると真っ白な霧が屋敷を包んで、火が燃え移るのを防いでくれました。」
N「このとき池の水はほとんどなくなって、底が見えていたそうです。」
山崎「おおっ、助かった、助かったぞ!ガマたちが、約束を守ってくれたぞ!」
N「カエルたちの活躍にすっかり感心した山崎は、」
N「それから池のガマを大切にしました。」
N「そのためにガマの数はますます増え続け、」
N「屋敷はいつしか『麻布のカエル屋敷』と呼ばれるようになり、」
N「江戸の名所のひとつになりました。」
N「これが現在のガマ池です。」
N「山崎主税助治正の屋敷があった土地は、」
N「マンションやアルゼンチン大使館などが建てられ、」N「当時500坪もの広さがあるといわれていたガマ池も」(500坪:1650m2)
N「マンションの敷地内に一部が残っているのみです。」
N「あの大火事の後、ガマの御利益に与ろうと江戸中の人々が」
N「山崎の屋敷に押しかけました。」
N「そこで山崎は『上』という漢字が書かれた御札を人々に授けることにしました。」
N「この御札は『上の字様』と呼ばれ」
N「防火、火傷のお守りとして人気を集めました。」
N「その後、昭和4年から『上の字様』は麻布町内の末広神社で授与されるようになりましたが、」(昭和4年:1929年)
N「第二次世界大戦中に消失し、御札は途絶えてしまいました。」
N「しかし60年以上の時を経てなお、『上の字様』を求める声があり、」
N「平成二十年、麻布十番稲荷神社(元末広神社)にて復元され授与が再開されました。」(平成二十年:2008年)
N「『上の字』は社伝の史実に基づいて、」(社伝:神社の由来、来歴などを記した資料のこと)N「ガマ池で汲んだ水を使った墨で書かれており、」
N「200年経った今も当時と変わらぬ姿で人々の信仰を集めています。」

おしまい

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