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4月8日の日本の昔話

八つ化けずきん

八つ化けずきん

 むかしむかし、あるところに、いたずら者の和尚(おしょう→詳細)さんがおりました。
 ある日、和尚さんが村はずれの道を歩いていると、道はずれのやぶの中で、一ぴきのキツネが古びた手ぬぐいを前にして、ばけ方の練習をしているのです。
「これはおもしろい」
 和尚さんがのぞいているとも知らず、キツネは手ぬぐいを頭にのせ、クルリンパ! と、若い娘になりました。
「ははん、あの手ぬぐいがばけ道具なんじゃな。なんとかだまくらかして、ちょうだいするか」
 和尚さんは、わざとしらん顔で歩きだしました。
 すると、キツネがばけた娘が、しゃなりしゃなりとやってきます。
「これは、美しいあねさまじゃのう。だが、ばけ方がなっとらん! 上のほうはよいが、足もとがまだまだ」
 正体を見破られて、キツネはビックリ。
 キツネはドロンともとの姿に戻ると、
「どこの和尚さまかぞんじませぬが、そんなにだめでやんすか?」
「だめ、だめ。そこへいくと、わしはどうだ。キツネに見えるかな?」
 キツネはたまげて、和尚さんをすっかりなかまだと思いこんでしまいました。
「わしのばけ道具は、ほれ、八つ化け頭巾(ずきん)。わしのだいじなたからものじゃよ」
と、いって、和尚さんはかぶっていた、ただの頭巾を見せびらかしました。
「どうだ、おぬしのと、取りかえてやろうか?」
「はっ、はい。ぜひとも」
 こうして、和尚さんはキツネの手ぬぐいを手に入れました。
「やった、やった! うまくいったぞ」
 寺へ帰ると、寺から寺へと見まわり役をつとめる僧正(そうじょう→一番えらいお坊さん)さまが、おともの小坊主をつれて、おいでになられました。
 二人をむかえた和尚さんは、すましてこんなことをいいます。
「このろうかの先に、二つの部屋がござります。どちらでも、お気にめす部屋でお休みくださりませ。わしは、お茶のしたくを」
 僧正さまがかたほうの部屋のふすまを開けると、きれいな娘がいました。
 僧正さまは、顔をまっ赤にしながら、
「ああ、いや、わしのような修行のできたものはな、おなごにはきょうみはないんじゃよ」
 小坊主の手前、むりにそういうて、もうかたほうの部屋に入ると、そこにはありがたい仏像がまつってありました。
「おお、これこそわしにふさわしい。なんまいだ、なんまいだ」
 まじめな顔して、お経をとなえたものの、やはり、さっきの娘が気にかかります。
 そのうち、小坊主がいねむりをはじめたので、コッソリととなりのへやに行ってみました。
 娘は、僧正さまにニッコリして、
「まあ、お坊さま、お酒を一ぱい。ささ、えんりょなさらずに、オホホ」
 憎正さまは、たらふく飲んで食って、上きげんです。
 するととつぜん、娘が、カッ! と目をむいた不動明王(ふどうみょうおう)さまになりました。
「こりゃあ、ぼうずが酒を飲んだな! そのしたを、引っこぬくぞ!」
「ひゃあ、おゆるしくださいませ!」
 僧正さまは庭へにげだしましたが、そこにいたウマにパカーンとけられて、どこかへふっとんでしまいました。
 じつは、娘も仏像も不動明王も、みんな和尚さんのいたずらだったのです。

おしまい

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