2月14日の日本の昔話
よくわかる説教
むかしむかし、ある坊さんが、いつも町の集まりにでかけては、ためになる話をしていましたが、みんな無駄口(むだぐち→おしゃべり)をたたいたりで、なかなか熱心には聞いてくれません。
なんとか話をちゃんと聞かせたいと、考えた坊さんは、次の説教(せっきょう→詳細)の日、坊さんはみなの衆に向かって、
「さあ、これから私がみなさんに何をお話しするか、わかるかのう?」
と、聞きました。
「そらあ、わからねえなあ」
と、みんなが口をそろえていいます。
「そうか、わからぬか。わからぬ話をしてもしょうがないから、今日はやめにするか」
こう言って、そそくさと帰ってしまいました。
このまた次の説教の日、坊さんは前と同じことを聞くと、今度は帰られては困るので、
「はい、よくわかってまさあ」
と、言いましたが、ところが坊さんは、
「ほお、わかっておるのか。大したものだ。それなら説明することもあるまい、今日はこれまで」
と、またまた帰ってしまいました。
みなの衆はこまりはて、次の説教の日を待ちました。
さて次の説教の日、坊さんは今度も同じことを聞くと、
「知っている者と、知らん者がおりやす」
すると、坊さんは喜んで、
「ほんにありがたいことじゃ。それなら知っておる者が、知らない者に教えておくれ」
そしてやっぱり、出て行ってしまいました。
みなの衆は、どうしたもんかと相談して、
「これはきっと、わしらがまじめに説教を聞かんから、坊さまが怒りなさったに違えねえ。みなであやまりに行くべ」
と、寺まで行って説教を続けてくれるよう、たのんだそうです。
次の集まりからは、みながじっくり話を聞くようになったので、坊さんも、いっそう熱心に説教をしました。
人の話は、ちょんと聞かなくてはいけません。
話を聞かないと、その人はこの坊さんのように、話してくれなくなりますよ。
おしまい
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