きょうの日本昔話
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3月27日の日本の昔話

金のナスビ

金のナスビ

 むかしむかし、ある国の殿さまには、とても美しいおきさきがいました。
 おきさきはみごもっていましたが、殿さまはまだ知りません。

 ある日の事、おきさきは殿さまのごはんを運ぶ途中、「プッ」と、小さなおならをしてしまいました。
 すると殿さまは怒って、
「無礼者! お前の様な者は、島流しじゃ!」
と、おきさきを遠くの島へ島流しにしたのです。
 島流しにされたおきさきは、その島で男の子を産んで育てて、いつしか十年あまりがたちました。

 ある日の事、おきさきは子どもから、
「どうして家には、おとうがおらんの?」
と、尋ねられて、島流しにされた理由をありのままに話しました。
「そうか。おらのおとうが殿さまだなんて知らなかった。・・・よし、おら、殿さまに会って来る」
 男の子は一人で舟をこいで海を渡ると、お城の近くでナスビのなえを売り歩きました。
「えー、金のナスビのなるなえは、いらんかなあ。金のナスビのなえ」
 その声を聞いて、殿さまはさっそく男の子をお城に呼びました。
「金のナスビがなるとは、実にめずらしい。全部買ってもよいが、そのなえは、誰にでも育てられるのかな?」
 殿さまが尋ねると、男の子が答えました。
「誰にでも、というわけではありません。でも、生まれて一度もおならをしたことのない人が育てれば、それは見事な金のナスビが出来ます」
 男の子の返事に、殿さまは怒り出しました。
「馬鹿者! この世のどこに、一度もへをしない者がおるか。いいかげんな物を売り歩くと、ただではおかんぞ!」
「おや? では殿さまにうかがいますが、この国ではおならをしても、罪にはならないのですか?」
「あたりまえじゃ! そんな事をいちいち罪にしていたのでは、国がなりたってゆかん」
「そうですか。
 けれど、わたしの母はむかし、小さなおならをひとつしただけで島流しにされました。
 それを、お忘れでしょうか?」
「なっ、何じゃと・・・」
 殿さまはハッとして、男の子を見つめました。
 よく見ると、目も口元も、自分にそっくりです。
「すると、お前は、もしや・・・」
 くわしいわけを聞くと、殿さまは男の子が自分の子どもだとわかりました。
「今まで、つらい思いをさせてすまなかった。すぐに、妻を島へ迎えに行こう」
 その後、お母さんと男の子は、お城で幸せに暮らしたのでした。

おしまい

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