4月4日の日本の昔話
和尚のしっぱい
むかしむかし、あるお寺に、和尚(おしょう→詳細)さんとふたりの小僧がいました。
さて、ある冬のばんのこと。
和尚さんが『でんがくどうふ(とうふを長方形に切って串にさし、味噌をぬって火にあぶった料理)』を二十串、いろりに、グルリとならべてさし、
「寒いときは、これがいちばんじゃ。さあ、やけてきたぞ」
こうばしいかおりに、はなをヒクヒクさせました。
とうふにぬりつけたあまいみそが、こんがりとやけて、たまらなくいいにおいです。
そこへ、においをかぎつけたふたりの小僧がとんできました。
和尚さんは、『でんがくどうふ』をひとりでぜんぶ、たべるつもりでしたが、いまさらかくすわけにはいきません。
そこで、
「ちょうど、いいところにきた。おまえたちにもわけてやろう。だが、ただわけてやったのではつまらん。串のかずをよみこんだ歌をつくりあって、そのかずだけ、たべることにしよう。では、わしからはじめる。いいかな、『小僧ふたり、にくし(二串)』」
と、ふた串とってたべました。
小僧が来なかったら、ひとりで食べられたのに。
ふたりの小僧がにくい、という意味です。
「おまえたちには、こんなまねができまい」
ところが、小僧はニコニコ顔です。
まず、年下の小僧が、
「ならば、これはどうでしょう。『おしゃかさまのまえの、やくし(八串)さま』」
みごとに、八串もせしめました。
病気を治す神さまの薬師如来(やくしにょらい)と、八串をひっかけたのです。
和尚さんは、あてがはずれてしまい、しぶい顔をしました。
でも、まだ十串のこっています。
まさか、これをそっくり、とられることはあるまいと、たかをくくって年上の小僧に歌をよませたところ、
「小僧よければ、和尚とくし(十串)」
できのよい小僧がいれば、和尚さんはとくをするという意味のうたで、みごと、のこりの十串を、のこらずたべてしまいました。
おしまい
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