5月22日の日本の昔話
真夜中のキツネの嫁入り
東京都の民話
むかしむかし、江戸にある大きな川の渡し舟小屋へ、一人の侍がやってきました。
侍は、大きな屋敷からきた使いだと言って、
「今夜、お屋敷の姫が、川むこうの町にあるお屋敷へ嫁入りされる。おつきの者たちは、百名を超えるであろう。この川の渡し舟を残らずここに集めて、待っていてほしい。とりあえず、ここに小判十枚をつつんでおいたが、舟賃はあとで、たくさんのご祝儀と一緒に出すつもりである」
と、渡し舟の用意を頼むと、帰っていきました。
「こりゃ、大仕事だぞ!」
渡し舟の船頭の親方は大喜びで、すぐに仲間たちの舟を渡し場に集めました。
そしてその夜、ちょうちんの灯をいくつもつらねて、たくさんの侍たちに見まもられながら、お姫さまのかごがやってきました。
船頭たちは、行列をうやうやしく出むかえました。
そして失礼のないように、一人一人を舟に案内して、ゆっくりと夜の川をわたっていきました。
むこう岸に着くと、行列の人たちはほとんど話もせずに、すいこまれていくように夜の闇の中に消えていきました。
さて、次の日の朝のことです。
船頭の親方は昨日受け取っていたお金を、とりあえず仲間たちにわけておこうと思いました。
ところが、神棚の上にのせておいた小判が入った包み紙を手にとって、思わず大声をあげました。
「なっ! なんだ、これは!」
なんと中に入っていたのは、十枚の葉っぱだったのです。
「ちくしょう! キツネのやつ、派手にやってくれやがったな!」
むかしは、こんな話がよくあったそうです。
おしまい
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