5月26日の日本の昔話
白いおうぎと黒いおうぎ
沖縄県の民話
むかしむかし、あるところに、二人姉妹の娘がいました。
お姉さんの方はとてもきれいな顔をしているのに、どういうわけか、妹の方はちっともきれいではありません。
だからお母さんも、きれいな顔のお姉さんばかり可愛がっていました。
ある日、二人一緒に道を歩いていると、向こうから馬に乗った男の人がやってきて、
「この村のお宮へ行くには、どっちへ行けばいいのか?」
と、たずねました。
男の人はひげだらけの顔をしていて、よごれた着物を着ていました。
(こんな人とは、口をきくのもいやだわ)
そう思ったお姉さんは、聞こえないふりをして下を見ていました。
でも、親切な妹は、
「それでは、わたしが案内してあげましょう」
と、言って、村はずれにあるお宮さんまで男の人を連れて行ってあげました。
お宮の前までくると、男の人はふところから白いおうぎを出して言いました。
「わたしは人間の姿をしているが、本当は山の神じゃ。お前はまことに親切な娘。お礼にこのおうぎであおいでやろう」
山の神さまが白いおうぎで娘をあおぐと、どうでしょう。
娘の顔は、みるみるきれいになりました。
「それにしても、お前の姉さんはひどい。わしのきたないかっこうを見て、口をきこうともしなかった。いくらきれいな顔をしていても、心はまっ黒だな」
そう言って、山の神さまはお宮の中へ消えて行きました。
さて、もどってきた妹を見て、お姉さんは目をまるくしました。
色が黒くてみっともない顔の妹が、見ちがえるほどきれいになっていたのです。
「どうして、そんなにきれいになったの?」
お姉さんは、くやしくてたまりません。
そこで妹からわけを聞き、すぐにお宮さんへ飛んで行きました。
「山の神さまお願いです。わたしもおうぎであおいでください」
するとお宮の中から、山の神さまが出てきて、
「そんなにあおいでほしけりゃ、のぞみ通りにあおいでやろう」
と、言って、ふところから黒いおうぎを取り出すと、お姉さんをあおぎました。
すると、白かったお姉さんの顔はみるみる黒くなり、とてもひどい顔になりました。
でも、それを知らないお姉さんは喜んで、妹のところへもどってきました。
「どう、すごくきれいになったでしょう?」
妹は何も言えなくて、首を横にふりました。
「えっ?」
お姉さんはあわてて近くにある池に行くと、水に顔をうつしてみました。
するとそこにうつっているのは、色の黒い娘の顔でした。
「どうしよう、どうしよう」
お姉さんはすぐにお宮へ行って、元の顔にもどしてくれるよう頼みました。
でもどこへ消えたのか、山の神さまは二度と姿をあらわしませんでした。
さて、妹はますますきれいな娘になって、その国のお殿さまの奥方になり、いつまでも幸せにくらしたそうです。
しかしお姉さんの方は、一生、黒い顔のままでした。
おしまい
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