きょうの日本昔話
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8月3日の日本の昔話

番町皿屋敷

番町皿屋敷

 江戸の番町のあるおやしきに、おきくという、うつくしいこしもとがいました。
 こしもととは、殿さまの身のまわりのおせわをする女の人です。
 おやしきには、いく人ものこしもとがいましたが、殿さまの青山播磨(あおやまはりま)は、おきくが大のおきにいりです。
 いつも、
「おきく、おきく」
と、かわいがっていました。
 ほかのこしもとは、おもしろくありません。
 そして、
「ふん、なによ。おきく、おきくって」
「おきくも、おきくよ。いいきになっちゃってさ」
「ねえ、ちょっと、こまらせてやろうよ」
と、わるいそうだんを始めました。
 それは、殿さまがだいじにしている、十まいひとくみの絵ざらを一まいかくして、おきくのせいにしてやろうというものです。
 このおさらは、先祖(せんぞ)からつたわる家宝で、一まいかけても、ねうちがなくなってしまいます。
 ある日、ひさしぶりに絵ざらをながめようとすると、九まいしかありません。
 さっそく、こしもとたちをよびつけて、しらべると、
「そのおさらなら、おきくが一まいわったのです」
 だれもが口をそろえていうので、殿さまは、おきくをきびしくしかりました。
「じぶんがわったならわったと、しょうじきにいえば、ゆるしてやる」
「いいえ、わたくしには、まったく身におぼえがございません。なにかのおまちがいです」
「えーい! かんだいにゆるしてやると言っておるのに、まだいいのがれをするつもりか!」
「でも、わたくしは、なにもしりません」
「まだ言うか! 顔もみとうない! 出て行け!」
 かわいそうに、おきくはその晩、やしきの井戸(いど→詳細)に身を投げて、死んでしまいました。
 さて、それからというもの、まよなかになると、やしきの井戸のなかから、
「一まーい、二まーい、三まーい、四まーい、五まーい、六まーい、七まーい、八まーい、九まーい、・・・ああ、うらめしやぁ」
 あわれきわまりないこえで、おさらをかぞえるようになりました。
 それからというもの、おやしきにはよくないことがつづいて、殿さまもこしもとたちも、つぎつぎと死んでしまいました。
 
 ※岡本綺堂作の戯曲。1916年(大正5)初演では、お菊が恋仲の青山播磨の気持ちをためそうと、自分で家宝の皿を割ったことになっています。

おしまい

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