きょうの日本昔話
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9月22日の日本の昔話

ノミの宿

ノミの宿

 むかしむかし、ある夏の日のことです。
 村の佐助(さすけ)じいさんは、用があって、旅のとちゅうで宿(やど→詳細)にとまりました。
 ところが、この宿屋にはノミ(→詳細)がそこらじゅうにいて、ひと晩じゅうノミに刺されて、とてもねむれませんでした。
(やれやれ、帰りもまた、ここでとまらにゃならんが、こんなことでは、どうにもならん。なんとかせにゃ)
 つぎの日、朝めしを食ベると、佐助じいさんはそうそうに旅じたくをして、店さきにいた宿の女主人に。
「ばあさんや。おまえさんの家では、なんとももったいないことをしとるのう」
と、いいました。
 するとおばあさんは、ふしぎそうに、
「それはまた、なんのことで」
「いや、ほかでもないが、わしの村ではな、薬屋がノミを買い集めておるわ。高値でのう。それなのに、おまえさんのところでは、こんなにおるのに、なんでお売りなさらんのじゃ」
「お客さま。ノミが薬になりますかいな?」
「ああ、なるとも、なるとも」
「はて? いったい、なににききますのじゃ?」
「いたみ、切りきず、ふき出もの、やけど、鼻づまり」
「それではお客さま。ぜひ、家のノミも買うてくだされまいか?」
「ああ、いいともいいとも。わしは、あと三日たったら、また、おまえさんのところでとめてもらうで、それまでに、せいだしてつかまえときなされ。わしの村ヘ持っていって、売ってしんぜよう」
 そういって、佐助じいさんは宿を出ました。
 さて、それから三日あと。
 佐助じいさんがこの宿にきてとまると、ノミは一ぴきもおりません。
 おばあさんがよほどせいだしてとったとみえて、ひと晩じゅう、ぐっすりとよくねむれました。
 あくる朝、佐助じいさんが宿をたとうとすると、
「旦那さま、旦那さま」
「なにか、ご用かね」
「あの・・・、ノミをたんまりつかまえておきましたで。ほれ、このとおり。どうぞ、これを売ってきてくだされ」
と、紙ぶくろをさしだしました。
「どれどれ。おおっ、これはおみごと。これだけの数を、よう、おとりなされた」
 佐助じいさんは、感心したようにいうと、ふくろをていねいに宿のおばあさんにかえして、
「このまえ、いうことをわすれましたが、ノミは二十匹ずつ、ちゃんと串にさしておいてくだされ。一串、二串と、かんじょうせにゃ、とても数えられませんのでな。近いうちにまたきますで、串をこしらえて、ちゃんとさしておいてくだされ。たのみましたぞ。じゃあ、おおきに、お世話になりましたな」
 そういうて、佐助じいさんは、とっとと宿を出て行きました。
 むろん、佐助じいさんが、この宿に来ることはありませんでしたが、ノミのいなくなったこの宿は、たいそうはんじょうしたそうです。

おしまい

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