9月27日の日本の昔話
大仏の目玉
「あれ? どこだ? どこにいったんだ?」
ここは、むかしむかしの、奈良の大仏がある東大寺です。
ある日、大仏さまの目玉がぬけおちて、どこヘいったかわかりません。
さっそく、京都や大阪から、大仏づくりの親方たちをよんできて、
「大仏さまの目玉を入れかえるには、どれほどのお金がかかる?」
と、値を見つもらせました。
すると、親方たちは、
「千五百両(1億円ほど)はかかる」
と、いうのです。
親方たちの考えでは、まず下で、大きな目玉をこしらえ、目玉ができたら、足場をくんで、大仏さまの目にはめようというものです。
寺の人たちは、
「高すぎる、千両にまけろ」
と、いいますが、親方たちは、
「それでは赤字です。こちらも商売ですから」
と、いいます。
「まけろ」
「まけられぬ」
「まけろ」
「まけられぬ」
そこへ、江戸からきた見物のひとりが顔を出しました。
「わしなら、二百両(千四百万円ほど)で、直しましょう」
それをきいた親方たちは、
「ばかにもほどがある。なんでこれが、二百両で直せるものか」
と、笑いました。
ところが、江戸の男はこう考えたのです。
(目玉がぬけおちて、見つからんとすりゃあ、大仏さまのからだの中ヘおちたにちがいない。それをはめ直せばいいだけだ)
寺の人たちはお金がないので、江戸の男にたのむことにしました。
男が目玉の穴から中に入ってさがすと、やっぱり目玉がありました。
さっそく、かついで上にあげ、大仏さまの目に、ピタッとはめました。
坊さんや親方たちは、それを見ていましたが、
「あいつ、目玉をはめたはいいが、じぶんはどこから出てくるつもりだ。出口はないはずだが」
と、なおも見ていると、あれ、あれ、あれっ。
なんと、大仏さまの鼻の穴から出てきたのです。
みんなは感心して、
「ほほう、目から鼻へぬけおったわい」
それからです。
かしこい人のことを「目から鼻へぬける」と、言うようになったのは。
おしまい
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