きょうの百物語
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3月11日の百物語

すっとぴカゴ

すっとぴカゴ
大阪府の民話

 むかしむかし、ある秋の夕ぐれの事です。
 村はずれの松の老木(ろうぼく)の下に、カゴが一つ置いてありました。
 身分の高い女の人を乗せる為の美しいカゴです。
 それを、たきぎ拾いに来た二人の男の子が見つけました。
「立派なカゴだな」
「本当だね。いつから置いてあったんだろう?」
 そこへ村の男たちがやって来て、子どもにたずねました。
「坊主たち、このカゴはいつからあったんだ?」
「わかんない。おいらがここへ来た時は、なかったんだ」
「そうだよ。たきぎを拾って帰ろうとしたら、置いてあったんだ。中から音がしたから誰かいると思うけど」
「人騒がせだな。カゴかきはどこへ行ったんだろう? まさか、カゴが一人でここへ来たわけではあるまい。ちょっと中の人に聞いてみよう」
 一人の男がそう言いながらカゴの戸に手をかけようとすると、戸がするすると開いて、中から女の人が顔をのぞかせました。
「あれ?!」
 カゴの中から顔をのぞかせたのは、若い娘が着る様なきらびやかな着物を着てはいますが、頭に白い物が混じった色の白い年配の女の人です。
「あの、あなたさまは、どちらのお屋敷のお方ですか?
 それからこんなところに、どうしていらっしゃるのですか?
 カゴかきがいなくなったというのなら、わたしたちがお屋敷までお送りいたしますが」
「・・・・・・」
 男が色々と尋ねましたが、カゴの中の女の人はだまっています。
 そして上目づかいに村の男たちを見ながら、時々薄気味悪い笑みを浮かべます。
「・・・。このお方は、口がきけないんだろうか?」
 辺りが暗くなるにつれて、女の人の白い顔がますます気味悪く見えてきます。
 男たちはぶるっと身震いしながらも、あれこれと相談を始めました。
「仕方がないから、このままにしておこうか?」
「しかし、あの辺りは夜になるとオオカミが出るところだ。ほうっておいたら、食われてしまうぞ」
「薄気味悪いが、今夜ひと晩だけでも、わしらで番をしてやろう」
 そして五人の若者が番をする事になり、それぞれが家に帰ってたいまつなどを準備しました。
 五人がたいまつをともしながら、再び松の木の下へやって来ると、あのカゴがありません。
「おや? カゴがないぞ?」
「きっと、カゴかきどもが、戻ってきたんだろう。おおかた、どこかで酒でも飲んでいたのではないか」
「全く、人騒がせな事だ」
 若者たちがぶつぶつ文句を言いながら帰ろうとすると、遅れてやって来た一人が若者たちに言いました。
「おい、おい。あのカゴが河原にあるんだと。近くにいた馬子(うまこ→ウマをひいて人や荷物を運ぶ仕事の人)たちがカゴの中をのぞこうとしたら、十七、八の、見た事もない美しい娘が顔を出したとよ」
「な、なんだと?」
 若者たちは、顔を見合わせました。
 若者たちの見たのは、確かに年老いた女の人でした。
「そんなばかな。おれ、見て来る」
「おれも行くぞ」
 若者たちが河原めざして走って行くと、その途中のお宮の裏の松の木の下に、あのカゴがありました。
「おかしいな。こんなところにカゴがあるぞ」
「本当だ、あのカゴに間違いない」
「カゴかきもいないのに、どうやってここまで?」
 若者たちが恐る恐るカゴに近づくと、カゴの戸がするすると開きました。
 そして中から出て来たものを見て、ビックリです。
「ぎゃあー、出たー!」
 カゴの中から出て来たのは、若い娘と、老婆と、のっぺらぼうと、二匹のヘビだったそうです。

おしまい

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