きょうの百物語
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5月22日の百物語

人食い鬼の娘

人食い鬼の娘
大阪府の民話

 むかしむかし、大阪のある山に、恐ろしい人食い鬼が住んでいました。
 その人食い鬼には一人娘がいて、今日は初めて人間を食べる日です。

「さあ、もうすぐここを人間が通るから、襲いかかって食べるんだよ」
 鬼の父親がやさしく言うと、鬼の娘は怖がって首を振りました。
「いやや。人を食べるなんて、いやや」
「大丈夫、わしがついていてやるから。大体、人も食えんようでは、立派な人食い鬼にはなれんぞ」
「でも・・・」
「さあ、頑張るんだ」
 鬼の父親は、一生懸命に娘に言い聞かせました。
 するとそこへ、男の人が通りかかりました。
 きりりとしたなかなかの美男子で、それに力も強そうです。
 鬼の娘は怖いやら恥ずかしいやら、すぐに父親の後ろに隠れました。
「ほら、何をぐずぐずしている。早く食わんか」
 鬼の父親は、娘を男の人の前に突き出しました。
「人食い鬼だ!」
 びっくりした男の人は、すぐに逃げ出そうとしました。
 すると鬼の娘は、手で顔を隠して泣き出したのです。
「いやや。人を食べるなんて、いやや」
 相手は人食い鬼といっても、まだ可愛い娘です。
 男の人は落ち着くと、鬼の娘にやさしく言いました。
「よしよし、もう泣くな。
 それよりも、わたしと腕相撲をしないか。
 もしお前さんが勝ったなら、わたしは喜んで食われてやるよ。
 でもお前さんが負けたなら、もう人を食うのをあきらめておくれ。
 いいね」
 そのとたん、鬼の娘はにっこり笑いました。
 鬼の娘は腕相撲が大好きで、これまで鬼の仲間に負けた事がありません。
「うん。腕相撲をしよう」
 そして男の人と鬼の娘は、さっそく腕相撲をはじめました。
「はっけよい。のこった!」
 ところが男の人の力はとても強くて、鬼の娘の腕は今にも倒れそうです。
 隠れて見ていた鬼の父親も、とうとうがまん出来ずに飛び出してきました。
「娘よ、何をやっている。相手は、たかが人間だぞ。しっかりしろ。ほれ、今だ」
 でも男の人は強くて、鬼の娘は体ごとひっくり返されてしまいました。
「やん、負けてしもうた」
 鬼の父親は娘を起こすと、叱る様に言いました。
「何とも、なさけない。これでは、人を食う事が出来んではないか」
 そして鬼の父親は、男の人に言いました。
「今度は、つな引き勝負だ」
 そして持っていたつなの一方を男の人に渡すと、鬼の父親は娘と二人でつなを力一杯引っ張りました。
「それ! 鬼の力を見せてくれよう!」
 しかし男の人はとても強くて、鬼の親子はずるずる引っぱられてしまいます。
「おい! 誰か手伝え!」
 鬼の父親の言葉に、どこからか二人の鬼が飛び出して来て、一緒につなを引き始めました。
「それ引け、わっしょい! それ引け、わっしょい!」
 四人の鬼は、歯を食いしばって、つなを引きます。
 ところが四人ともずるずると引っ張られてしまい、男の人の方へと倒れ込んでしまいました。
 鬼の父親は、びっくりです。
「こいつは、たまげた! お前は、いやあなたは、なんと力の強いお人だ。とてもとても、我々鬼の食えるお人ではない」
 感心する鬼の父親に、男の人が言いました。
「それでは約束通り、人を食うのをやめてもらうぞ」
「わかった。約束は守ろう」
 それから鬼たちは約束を守って、二度と人を襲わなくなったそうです。

おしまい

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