きょうの百物語
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7月19日の百物語

やまんばと名刀

山姥と名刀
山形県の民話

 むかしむかし、ある村に、隼助(はやすけ)という若者が住んでいました。
 とても貧乏な若者でしたが、隼助の家には先祖が立派な手柄を立てて、お殿さまから褒美にもらった『鬼殺し』と呼ばれる名刀(めいとう)が家宝として伝わっています。

 ある日の事、隼助が山に山ブドウやアケビを取りに出かけると、アケビのつるで編(あ)んだ大きな大きなカゴが落ちていました。
「おお、これはちょうどいい」
 隼助はその大きなカゴに、ブドウやアケビをたくさん入れて山を下りました。

 その夜の事です。
 山の方から、
 ドシン! ドシン!
と、不気味や地響きが隼助の家に近づいて来ました。
 そして地響きが隼助の家の前で止まると、
 ドンドンドン! ドンドンドン!
と、家の戸が叩かれて、雷の様な大声が叫びました。
「隼助! わしのぞうりを返せ! わしのぞうりを返せ!」
 隼助は、ブルブルと震えながら答えました。
「何の事だ。おら、人のぞうりなぞ盗らねえぞ」
「うそをつくな! おらの干しておいたぞうりの片方を、山から持って行ったでねえか。返せ!」
 雷の様な大声はそう言うと再び家の戸を叩きますが、家の中には入ってこようとはしません。
 大声に山から持って行ったと言われて、隼助は山で拾った大きなカゴを思い出しました。
「ぞうりは知らねえが、山で拾った物なら家の裏に干してある。欲しければ、とっとと持って行け」
「家の裏? ・・・ああ、ここにあったか」
 雷の様な大声はそう言うと、地響きを立てながら山へと帰って行きました。

 翌朝、隼助が家の外に出て見ると、大きな足跡が山まで続いていました。
 その大きな足跡は、昨日山で拾った大きなカゴと同じくらいの大きさです。
「この大きな足跡は、山姥(やまんば)に違いねえ!
 するとあの大きなカゴは、山姥のぞうりだったのか
 ・・・それにしてもあの山姥、どうして家の中に入ってこなかったのだろう? 」

 隼助が山姥に襲われなかったのは、山姥が隼助の家に伝わる名刀を恐れて、家に入る事が出来なかったからと言われています。

おしまい

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