5月8日の小話
パッと死ぬ
若い者が集まって、たあいもない事を、なんだかんだと話をしていましたが、そのうち、ひとりの男が、
「よく聞け。おれが死ぬときは、男らしく、パッと死んでみせるぞ」
と、いいました。
ほかのものはわらって、
「バカいえ。そうは、うまくいくもんか」
「いや、何が何でも、おれは、パッと死んでみせる。絶対だ」
と、いってききません。
ところが、その男。
二、三日すると、ウマにけられて、本当に、パッと死んでしまいました。
いっしょに話をしていた連中は、お通夜(つや→死者を葬る前に家族・縁者・知人などが、遺体の側で終夜守っていること)の席で、すっかり感心していいました。
「いやあ、まったく、ふしぎ、いや、大したものだ」
「あいつ。本当に、いったとおりに、パッと、死んだなあ」
「うん。生きていたら、いまごろは、鼻たかだかと、わしらにじまんしておることだろう」
「ああ、そういえば、あいつが死ぬときにいっしょにいた男がいっておったが、あいつの最後の言葉が、『やったぞ!』だったそうだ」
おしまい
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