きょうの江戸小話
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5月28日の小話

みょうが宿

みょうが宿

 街道すじにある宿屋(やどや →詳細)の主人と女房が、何やら、ひそひそとはなしておりました。
「おまえさん、今夜とまるお客さんは、大そうお金持ちそうなお客だね。あのふくれたさいふをわすれていけばいいが」
と、女房がいうと、主人も、
「そうだなあ、何とか、わすれものをするような、よいくふうはないものかなあ。そういえば、何でも、やたらとみょうがを食べさせると、わすれっぽくなるというぞ、さっそく、食べさせてみよう」
と、汁もみょうが、おかずもみょうが、なにもかも、みょうがづくしの料理をつくって出しました。
 さあ、お客のほうは、びっくり。
「こう、みょうがだらけのおかずでは、たまらぬ」
と、次の朝早く、宿屋を出ていってしまいました。
 客が出ていくと、主人と女房は、いそいで客の部屋に入り、
「さあ、わすれものはないかな、ないかな」
と、さがしまわりましたが、何一つ、わすれものはありません。
「はてな、みょうがのききめが、なかったかな」
と、主人がいうと、女房は、
「いやいや、おまえさん、ききめがあった、あったよ」
「えっ、なにが」
「あのお客、かんじんかなめの、宿賃(やどちん)をはらうのを、わすれていったよ」

おしまい

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