6月15日の小話
おしょうの約束
あるお寺に、けちなおしょうさんがいました。
まいばん、小ぞうに、おかゆをたかせます。
小ぞうのばんごはんもおかゆなので、はらがへってしかたがありません。
「おかゆをたかないですむくふうは、ないもんじゃろか」
小ぞうは、いいことを考えました。
あるばん、おしょうさんが食べるおかゆに、しおをたっぷりといれて、よなかに、のどがかわくようにしておきました。
そして、水がめや、やかんの水を、すっかり空っぽにしておきました。
さて、そのばんおそく。
こぞうは白い着物をきて、井戸(いど→詳細)にかくれ、つるべ(井戸の中の水をくむためのおけ)のなわをにぎっていました。
おしょうさんは、そんなことは知りません。
「今夜は、やけに、のどがかわく。井戸の水をくみあげて飲もう」
ねぼけまなこで、井戸にやってきました。
すると、井戸の中から、
「いまごろ、だれじゃ! わしは、井戸の神さまなるぞ。夜中に井戸をつかってはならぬ」
こぞうは、こわい声でいってやりました。
「わ、わしは、この寺のおしょうです。今夜だけ、水を飲ませてください」
おしょうさんが井戸の中をのぞくと、白い着物すがたが、ぼんやりとみえます。
「一てきも飲ませるわけにはいかん。だが、明日から、水を多くつかう、おかゆはたかないと約束するなら、今夜だけはゆるしてやろう」
「はい、これからは、けっしてたきません。ふつうのごはんにします」
こうして、おしょうさんは、ようやく、井戸の水を飲むことができました。
あくる日、こぞうが、
「今夜も、おかゆをたきましょうか?」
と、きくと、おしょうさんはあわてて、
「いや、いや、とんでもない。おかゆは、もう、こりごりじゃ」
おしまい
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