きょうの江戸小話
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6月21日の小話

おいはぎかご

おいはぎかご

 むかしは、いまのように、がいとうなんぞというものがありませんでしたから、夜道はまっ暗です。
 それで、よく、おいはぎ(通行人をおどかして、衣類や持物などをうばう人 →詳細)が出たものでした。
 あるお店のだんなが、江戸の新橋(しんばし)のあたりから、かごにのりました。
 少しいくと、かごかき(かごをかつぐ人)が、きゅうにかごをとめて、
「だんな、すみませんが、はだかになってください」
と、いいます。
「なんだと! おまえら、かご屋のおいはぎか! この、おいはぎかごめ! まだ日がくれたばかりなのに、もうひんむく気か!」
と、だんなは、腹立ちまぎれにいうと、
「いやいや、だんな、そうじゃないんです。このごろは、おいはぎめが出て、あぶなくってしょうがねえから、やられる前から用心して、着物をぬいで、下にしいてもらおうとおもってね」
と、かごかきがいいます。
 だんなも「なるほど、そいつは名案だ!」と感心して、いわれたとおり着物をぬぐと、しりの下にしいてしまいました。
 エイホウ、エイッホウ、
と、しばらくいくと、あんのじょう、大男のおいはぎが現れました。
「こらっ! 身ぐるみぬいで、おいていけ」
 すると、かごかきは、はだかのだんなを見せると、
「これこのとおり、このかごは、もう、おいはぎずみです」
「むむっ、それなら仕方がない、行ってよし」

おしまい

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