きょうの江戸小話
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8月2日の小話

夕立屋

夕立屋

 道具屋のあるじが、ぶつぶついいながら、店さきで、ほこりをたたいておりました。
「えーい。まい日、まい日、こう日照り(ひでり→雨が何日もふらないこと)が続いちゃ、風のふくたんびに、大事な売り物に、ほこりがかかってならんわい」
 ちょうど、そこヘ、
「夕立(ゆうだち→夕方、急に曇って来て激しく降る大粒の雨)ー。夕立ー」
と、水売りの声。
 これは、ちょうどよいとあるじは、
「おい、夕立屋」
と、よびとめました。
「へえ、およびは、こちらさんで。ヘえ、ヘえ。それで、水は」
「となりのかどから、こっちのかどまで、たっぷりとふらせて、いくらだ」
「えーと。へえ、五十文(千五百円ほど)に、おまけいたしておきます」
「そうか。まけろとはいわんから、どうか、たっぷりふらせておくれ」
「へえ、かしこまりました」
 そのとき、むすめがおくから出てきて、
「わたしにも、三文(九十円ほど)ほど、おくんなさい」
「へえ、おじょうさま。三文ばかりの夕立。なんになされます」
 すると、むすめ、きれいに、花をさかせた小さな鉢(はち)をさし出して、
「あい、この桜草(さくらそう→多年草のかわいい植物)にやります」

おしまい

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