きょうの江戸小話
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9月30日の小話

ぱたぱたとふうふう

ぱたぱたとふうふう

 あるお寺に、ひどく欲ばりのおしょうさんと、ふたりのこぞうさんがいました。
 おしょうさんは、人に分けてやるのが大きらいで、おいしい物があると、こぞうさんにかくれてみんな食ベてしまいます。
 中でも、大好物のおもちをもらったときなどは、
「ささ、おまえたち、早くねろや。はやくねないと、山からおばけがくるぞ」
 そういって、こぞうさんを追っぱらうことにきめていました。
 けれどもおもちを焼くにおいは、すきまをくぐって、別のヘやまで届くものです。
 ねたふりをしているふたりのこぞうさんは、鼻をヒクヒクさせて、がまんするしかありません。
「うまそうだなあ。食いたいなあ」
 そこでふたりは相談して、おしょうさんの前にいきました。
「おいらの名前を『ぱたぱた』と、変えてくれませんか」
「おいらは『ふうふう』に、ねがいします」
 ふしぎなことをいうこぞうだとおもいましたが、べつに損(そん)をするわけでもありません。
「おかしな名前だの。よしわかった」
 その晩、いつものようにこぞうたちを追っぱらったおしょうさんが、ひとりでもちを焼いていると、もちはほどよく焼きあがりました。
「これはうまそうじゃ。さて、食べる前に、もちについた灰をおとしてと」
 おしょうさんが、『ぱたぱた』と、灰をはたいて食ベようとすると、
「はーい。お呼びですか?」
と、『ぱたぱた』と名前を変えたこぞうさんが、飛びこんできました。
「別によびはせんが、しかたがない。おまえも1つ食え」
 二人が『ふうふう』と、あついもちをふいてさましていると、
「はーい、お呼びですか?」
 『ふうふう』と名前を変えたこぞうさんが、飛びこんできました。
「よびはせんが、しかたがない。おまえもいっしょに食え」
 名前をかえたおかげで、二人のこぞうはおもちを食べることができました。

おしまい

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