10月10日の小話
よっぱらいのおとしもの
男たちが三人で、さけをのみあっているうちに、ひとりが、よいつぶれてしまいました。
「しょうがねえ、家までおくっていくか」
ふたりは、よいつぶれた男を、りょうわきからかかえて、あるきだしましたが、このふたりも、かなりよっぱらっていて、ちどり足(左右のあしの動きが、バラバラなようす)です。
あっちへふらふら、こっちへふらふらしながら、どぶにはまることもなく、よいつぶれた男の家にたどりつきました。
「さあ、ついたぞ。しっかりしろよ。しかし、おまえはいやに軽いな。・・・うん?」
軽いのもあたりまえ。
よくみると、そこにあるのはきものだけで、かんじんの男がみあたりません。
おかみさんはカンカンです。
「あんたたち、うちの人は、どこです!」
「どこって、その、おびがゆるんで、とちゅうの道におとしてきちまったらしい」
「なにをのんきなこと。こうしてはいられないよ」
おかみさんがとびだしていって、さがしまわると、あるじがはだかで、橋のたもとにおちたまま、鼻ちょうちんをふくらませながら、ねていました。
おかみさんが、それをおんぶして、かえってくると、ふたりの男が、まだ、よいのさめないむねをなでおろして、
「すまない、すまない。おとしてきたのは、おれたちのおちどだ。それにしても、だれかに、ひろわれなくて、よかったなあ」
「ほんとうだ。なんて運がいいんだ。もしひろわれていたら、お礼に、一割やらなくてはならないところだった」
おしまい
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