12月26日の小話
火事の炭
あるとき、村で火事がありました。
けちで有名な亭主は、二階のもの干しからずっとそのようすを見ながら、女房を呼んで言いました。
「あの燃えぐあいじゃあ、だいぶん炭ができているだろう。おまえ、ひとっ走りいって、炭をもろうてこい」
そこで女房は、さっそく火事場まで出かけていったが、少しして、何も持たずに帰ってきました。
「おまえさん、炭をわけてほしいと、たのんでみましたが、『このたわけもんが! 人が一生けんめい火を消しとるときに、何いうとる、あぶないから早う帰れ』と、どなられ、炭は一本ももらえませんでした」
すると、それをきいた亭主は、
「なに、そんなことを言うて、炭は一本ももらえなんだか。ようし、わかった。そんなら今度うちの焼けたときには、炭は一本もやらんぞ」
と、炭のように、まっ赤になっておこったそうです。
おしまい
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