きょうの日本民話
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1月2日の日本民話

天福地福

天福地福
新潟県の民話

 むかしむかし、あるところに、正直なおじいさんと欲張りなおじいさんとが、となりあって住んでいました。
 ある年のくれに、二人が町で出会ったときに、
「正月の二日の夜にゃ、おたがいに、よい夢を見たいものだね」
「うん、福のさずかるよい夢をな」
と、話し合いました。
 そしておたがいに見た夢がどんな夢だったか、教え合うことにしました。
 正月の三日の朝、二人は庭のかきねの所で顔を合わせました。
 正月のあいさつもそこそこに、
「どうだったね、よい夢を見たかね?」
 欲張りなおじいさんが聞きました。
「見た見た、おらの夢は、天から福をさずかった夢じゃよ」
 正直なおじいさんが教えると、
「そうか、おらのほうは、地から福をさずかった夢じゃった」
 欲張りなおじいさんも教えました。
「どちらも、よい夢だったな」
「そうだ、今年は楽しみだ」
と、言い合って、二人ともごきげんでした。
 正月が過ぎて、いく日かたったある日の事。
「今日はずいぶんとよい天気じゃ。マメでもまいてみよう」
 正直なおじいさんが、うらの畑に出てたがやしていると、くわの先がガチンと石にぶつかりました。
「はて? こんな所に、石などあるはずがないのだが」
と、思いながらその石を取りのけると、下にかめがうずまっていました。
 正直なおじいさんがかめのふたを取って見ると、中には大判小判がぎっしり入っていて、まぶしいくらいに光っていました。
「これはたまげた。この宝は、となりのじいさまが夢に見た地福にちがいない。なんといっても、地からさずかった宝だからな。早く行って知らせてやらにゃあ」
 正直なおじいさんは、さっそく畑仕事をやめて、となりのおじいさんに知らせに行きました。
「ほれ、お前さんの夢に見た地福が、おらの畑から出たぞ。石の下からかめが出てな、大判小判がたっぷり入っておった。早く行って取ってくりゃいい」
 正直なじいさまは、かめが出た所を教えてやりました。
 そして家に帰ると、その事をおばあさんに話してやりました。
「ばあさま、おらの畑から地福が出てな、となりのじいさまに知らせてやったら、えらく喜んでおったぞ。すぐに大判小判の入ったかめを取って来るじゃろう」
 すると、おばあさんは、
「そら、よい事をなさった。さあ、火にでも当たらっしゃい」
と、気持ちよく答えて、欲のないおじいさんをほめてあげました。
 さて、となりの欲張りなおじいさんは、大いそぎでかめの出た畑へ飛んで行きました。
 かめは、教えられた所にちゃんとありました。
「今年はなんてよい年なんじゃ! そうれ、♪大判小判がザックザク」
 欲張りなおじいさんは鼻歌を歌いながら、かめのふたを取ってビックリ。
 かめの中には大判小判どころか、気味の悪いヘビが何匹も入っていて、ニョロニョロとはい回っているではありませんか。
「あの、くそったれじじいめが、よくもおらをだましやがったな! これが大判小判がたっぷりだと! くそっ!」
 欲張りなおじいさんは、顔をまっ赤にして怒りました。
 そして、
「今度はおらのほうが、あのじじいめをおどかしてやらにゃあ」
と、言って、ふたをしっかりすると、かめをせおって帰りました。
 家に着くと、欲張りなおじいさんは長いはしごを持ち出して、となりの家の屋根にのぼりました。
 屋根の上につき出ている、けむ出しの窓から中をのぞいてみると、おじいさんとおばあさんはいろりに火を赤あかと燃やして、なにやら楽しそうに話し合っていました。
「人をだましておいて、いい気なもんだ」
 欲張りなおじいさんは、ますます腹を立てました。
「さあ、これでもくらえ!」
 欲張りなおじいさんは、持って来たかめのふたを取ると、ガバッと中のものをおじいさんたちの頭めがけて落としました。
 ところが不思議な事に、かめの中から出たものはヘビなんかではなく、本当の大判小判だったのです。
「ありゃあ、大判小判が天井からふって来たぞ。おかしなこともあるもんだて。いや、これこそおらが夢に見た天福だ。ばあさま、天福がさずかったんだ!」
「ほんとになあ」
 二人は大喜びです。
 正月二日の夜に見た夢が本当になり、正直なおじいさんとおばあさんは大変なお金持ちになって、いつまでも楽しくくらしたという事です。

おしまい

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