1月3日の日本民話
どっちが本物?
兵庫県の民話
むかしむかし、山おくの一けん家に、木こりとおかみさんと、生まれたばかりの赤ちゃんがいました。
ある日の事、木こりが仕事からもどってくると、いろりのそばに二人のおかみさんがすわっているのです。
「なんだ、これは?」
顔も着ている着物もそっくりで、どっちが本当のおかみさんか見分けがつきません。
おまけに二人とも赤ちゃんをだいていて、赤ちゃんの顔と着物もそっくりです。
(ははん。さては、タヌキのしわざだな)
木こりはわざと平気な顔でおかみさんたちのよこにすわると、いろりの中に火ばし(ひばし→炭火などをつかむ金属製のはし)を入れました。
いろりの火で、火ばしはまっ赤になりました。
それをつかんで、木こりが言いました。
「はて、どっちが本物かな。わしの嫁なら耳を動かすはずだが」
そのとたん、一人のおかみさんの耳がピクピクと動きました。
「お前がにせものだ!」
木こりはいきなり、その動いた耳に火ばしをつきさしました。
「フギャーーー!」
火ばしを耳にさされたおかみさんは、たちまちタヌキの姿に戻って、ころぶようににげていきました。
「しようのないタヌキだ」
木こりはホッとして、おかみさんと赤ちゃんをだきしめました。
おしまい
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