7月19日の日本民話
打ち出の小づち
高知県の民話
むかしむかし、ある村に、ひどいなまけ者がいました。
おかみさんがガミガミ言っても、仕事をしないで遊んでばかりいます。
「さて、今日は大黒(だいこく)さまのお祭りでも見物にいくか」
ある日、なまけ者はおかみさんに何も言わずに、出かけていきました。
なまけ者は、大黒さまにお参りをして、
「大黒さま、どうぞわたしをお金持ちにしてください」
と、おがみました。
すると、大黒さまが現れて、
「なまけ者でも、わしのところにお参りにくるとは感心。お前にこれをやろう。これをふれば、なんでも欲しい物が出てくる」
と、言って、一寸法師で有名な、打ち出の小づちをくれたのです。
なまけ者は大喜びで、家に帰りました。
その途中で、ぞうりのひもが切れたので、なまけ者はためしに打ち出の小づちをふってみました。
「ぞうりよ、ぞうり」
すると、どうでしょう。
ぞうり売りがやってきて、ぞうりをただでくれたのです。
「これは、いい物をもらったぞ」
なまけ者は新しいぞうりにはきかえると、大いばりで帰ってきました。
ところがおかみさんは、なまけ者の顔を見るなり言いました。
「米を買うお金もないというのに、どこを遊びまわっていたんだい!」
「大黒さまへ、お参りにいってきたんだ」
「なんだって! 大黒さまが、あんたのいうことをきいてくれるもんか!」
どなるおかみさんに、なまけ者は打ち出の小づちを見せて言いました。
「ほら、これが大黒さまにいただいた打ち出の小づちだ。ほしいものは何でも出るぞ」
「お金もないくせに、こんなおもちゃなんか買ってきて。このろくでなし!」
おかみさんは、男をなぐりつけました。
これにはさすがの男も、とうとう腹を立てて、
「やかましい! この鼻くそめが!」
と、言いながら、打ち出の小づちでおかみさんをたたいたのです。
するとどうでしょう。
おかみさんはたちまち、大きな鼻くそになってましいました。
おしまい
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