きょうの日本民話
童話集 > 民話 > 7月

7月27日の日本民話

オオカミの恩返し

オオカミの恩返し
大分県の民話

 むかしむかし、ある山の中の一軒家(いっけんや)に、おかあさんの息子がくらしていました。
 二人はひどい貧乏だったので、お母さんも息子も、毎日毎日働きづくめです。
 ある日のま夜中の事、お母さんが急の病(やまい)にかかって苦しんでいました。
 医者は、山の向こうの里にしかいません。
 それに山にはたくさんのオオカミがいるので、夜になると誰も外に出ようとはしません。
 ですが息子は、お母さんの病気を治したい一心で出かけました。
「たのむ、オオカミよ、どうか出ないでくれ」
 息子は神さまにいのりながら、山道をいそぎましたが、やはりオオカミは出てきたのです。
 一匹の大きなオオカミに、まっ赤な目でにらまれた息子は、
「オオカミどん、今だけはおらを食うのをかんべんしてくれ。おっ母さんが病気で苦しんどるだ。医者さまを連れて来ねばなんねえ。たのむ。見逃がしてくれ」
と、言いましたが、オオカミはこっちへ近づいてきます。
「たのむ。医者さま連れて来たら、きっと食われに来るから」
 息子は泣いてたのみましたが、オオカミはどんどん近づいてきます。
 オオカミの息が顔にかかったとき、息子は目をつぶって、オオカミに食べられるのをかくごしました。
 ですが、オオカミはかみついてきません。
(もっ、もしかして、見逃してくれたのか?)
 息子がゆっくりと目を開けると、オオカミはやっぱり目の前にいます。
「ヒエーッ!」
 息子は再び目をつぶりましたが、オオカミはその場にジッとしています。
(どうした? どうして、かみつかないんだ? なにか、言いたいことでもあるのか?)
 不思議に思った息子がオオカミを見ていると、どうもオオカミの様子がおかしいのです。
 舌をベロンと出して、口を大きく開けたまま何度も頭を下げたり上げたりしています。
 どうも、口にある何かをうったえている様子です。
 息子がオオカミの口の中をのぞいてみると、キラリと光る物がありました。
「おや、のどに骨が刺さっとるぞ」
 息子はオオカミののどに手を入れて、ささっていた骨をぬいてやりました。
 するとオオカミは何度も何度も頭を下げて、そのまま立ち去っていきました。
 何とか無事に、息子は医者の家をたずねたのですが、医者はオオカミを怖がって、外に出ようとはしません。
 そこで息子は薬だけをもらって、急いで山道を引き返していきました。
 すると今度は、四、五十匹ものオオカミが息子に寄って来て、するどいキバを息子にむけました。
(ああっ、今度こそだめだ。おっ母さん。すまん!)
 息子がかくごを決めたその時、突然大きなオオカミが飛び込んで来て、取り囲んでいるオオカミに向かってほえました。
 すると、息子を取り囲んでいたオオカミたちは、一斉(いっせい)にどこかへ行ってしまいました。
 この大きなオオカミは、さっき息子が骨を抜いてやったオオカミで、オオカミの大将だったのです。
 息子はオオカミの大将に守られながら、無事に家に帰ることが出来ました。
 次の朝、息子が家を出ようとすると、家の前にイノシシやウサギやキジなどの獲物(えもの)が、山のようにつまれています。
 息子はそれをふもとの里に売りに行き、たくさんのお金を手にすることが出来ました。
 また、お母さんの病気もすっかりよくなったので、二人は幸せに暮らすことが出来ました。

おしまい

きょうの「366日への旅」
記念日検索
きょうは何の日?
誕生花検索
きょうの誕生花
誕生日検索
きょうの誕生日
福娘童話集
きょうの世界昔話
福娘童話集
きょうの日本昔話
福娘童話集
きょうのイソップ童話
福娘童話集
きょうの小話

今月一覧へ トップへ