12月21日の日本民話
かほうは、ねてまて
長崎県の民話
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
ひどい貧乏でしたが、二人とも心のやさしい人です。
あるお正月の朝、目をさましたおじいさんが、おばあさんに言いました。
「おら、いい夢を見た。うらの畑に大きな木があるだろ。その木の根元をほっていたら、小判のどっさりつまったつぼが出てきてな。うれしやと思ったら、目がさめた」
それを聞いたおばあさんは、
「それじゃ、早くほりに行きましょう。むかしからお正月に見る夢は、『初夢(はつゆめ)』といって、本当の事だといいますよ」
と、言って、急いで起きようとしました。
すると、おじいさんが言いました。
「これこれ、そんなにあわてちゃいけない。むかしから、『かほう(→幸運)はねて待て』と、いうじゃないか」
「それもそうですね。それじゃ、ゆっくりねていましょか」
おばあさんは、またねどこにもぐりました。
ところがこの時、家の前を通りかかった、となりのよくばりじいさんが、二人の話を聞いていました。
(しめしめ、いいことを聞いたぞ)
よくばりじいさんは、さっそくクワを持って畑のところへ行きました。
大きな木の根元をほってみると、どうでしょう。
本当につぼが出てきたのです。
「ありがたい、ありがたい」
よくばりじいさんは大喜びでつぼをかかえて、自分の家にもどりました。
ところがふたを取ってみると、中は石ころだらけで、いくらさがしても、小判なんか一枚も出てきません。
(あのじじいめ。よくもだましやがったな!)
よくばりじいさんはすっかり腹をたてて、そのつぼをかかえてとなりのおじいさんの家に行き、
「この、うそつきじじい!」
と、言うなり、まどから家の中へ投げ込んだのです。
ドッスン!
おじいさんとおばあさんは、ビックリしてとびおきました。
音のした方を見てみると、家の中につぼが転がっています。
「だれがこんなことを」
言いながらつぼのふたを取ってみると、なんとピカピカの小判がどっさりとつまっていたのです。
おばあさんは、大喜びで、
「やっぱり、おじいさんの夢は本当だったのですね」
と、言いました。
すると、おじいさんもニコニコして、
「ほら、かほうはねて待てば、むこうからやってくるんだ」
と、言いました。
おしまい
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