12月30日の日本民話
とうがらし売りとかき売り
山形県の民話
むかしむかし、とうがらし売りとかき売りが、雪の降る道で一緒になりました。
「ひどい雪になってきたね」
「まったくだ。これじゃ、商売にならん」
話しながら歩いているうちにも、雪はだんだん激しくなり、とうとう吹雪になりました。
どこかに休む所はないかと探して見ましたが、あたり一面雪ばかりで、何も見えません。
「これは、下手に動きまわっても疲れるだけだ」
「仕方ない。しばらくじっとしていよう」
二人は雪の中に座っていましたが、そのうちに、あたりがだんだん暗くなってきました。
「ああ、お腹がへったなあ」
かき売りは、とうとう売り物のかきを食べ始めました。
それを見て、とうがらし売りはゴクリとつばを飲み込みました。
「すまんが、わしにもかきをわけてくれないか。そのかわり、とうがらしをやるから」
すると、かき売りは、
「とんでもない。とうがらしなんか、腹のたしになるもんか」
と、かきの包みを、しっかりと抱きしめました。
とうがらし売りは仕方なく雪で団子を作ると、その上にとうがらしの粉をふって食べてみました。
「・・・!」
からいばっかりで、ちっともおいしくありません。
それでもがまんして飲み込むと、胃の中がきゅっと熱くなりました。
「ひえっー!」
とうがらし売りは、目から涙をこぼしました。
「それみろ。とうがらしなんか食えるもんか」
かき売りは、また一つかきを出して食べました。
でも、雪の中で冷たいかきを食べたので、体がいよいよ冷えてきて、がたがたふるえ出しました。
ところが、とうがらし売りは体がポカポカあたたかくなってきて、手足に汗をかくほどです。
それを見て、かき売りが言いました。
「すまんが、わしにもとうがらしをくれ。そのかわり、かきをあげるから」
「とんでもない。かきなんか食っても、体が冷えるばかりだ」
とうがらし売りは、とうがらしの包みをしっかり抱きしめました。
やがて吹雪は、ますます強くなってきました。
とうがらし売りは、それからも雪の団子を作り、それにとうがらしの粉をふりかけて、せっせと食べました。
おかげで体が火のように熱くなり、顔がまっ赤になりました。
さて、次の朝、ようやく雪がやんだ時、とうがらし売りは元気でしたが、かき売りはすっかり冷たくなっていたそうです。
おしまい
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